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ふぇみんの書評

嘘に支配される日本

中野晃一、福島みずほ 著

    嘘に支配される日本
  • 中野晃一、福島みずほ 著
  • 岩波書店1800円
 自民党総裁選で石破氏が「善戦」し、沖縄県知事選で玉城氏が圧勝。ようやくアベ政治の終わりが見え、アベ改憲NO!の世論も定着しつつある。そんなふうに思えてきた今だからこそ読みたい書。  市民と野党の共闘でアベ政治を終わらせようと運動する「市民連合」の中野晃一(上智大学教員)と、国会で「恫喝」をはね返しアベ政権を追及する福島みずほ(社民党副党首)の対談本。ウソ答弁、文書改竄がまかり通り、偽造資料でも、立法事実なしでも法律が「成立」する「嘘に支配される日本」。この「新自由主義のなれの果て」のアベ政治をやめさせ、民主主義を甦らせるには、この政治に憤り、尊厳の回復を求める多様な人びと(女性や若者など)の立ち上がり、政治参加が不可欠であると二人は結論づける。「新しい人がたくさん出てこなかったら運動は変わりません」(福島)。3.11後の市民運動、戦争法反対の中のSEALDsの運動を見ていると、なるほどと頷ける。(ひ)

唱歌の社会史 なつかしさとあやうさと

中西光雄、河津聖恵、山室信一ほか 著

  • 唱歌の社会史 なつかしさとあやうさと
  • 中西光雄、河津聖恵、山室信一ほか 著
  • メディアイランド2000円
 唱歌は、実は中央集権国家を目指した明治政府・文部省が作った官製歌だ。誰でも知っている唱歌「蛍の光」には封印された歌詞がある。今は歌われない4番には「千島のおくも おきなわも やしまのうちの まもりなり」とある。この歌が世に出た1881年は樺太・千島交換条約や沖縄処分から数年後、国家意識を称揚する明治政府の意図が歌に反映されたのだ。  本書は、コラム「唱歌の社会史」を新聞連載した中西光雄を中心に、詩人の河津聖恵、政治学者の山室信一らによって、唱歌とは何かが多角的に語られる。他にも、「我は海の子」にうたわれた富国強兵、「里の秋」の国威発揚など、唱歌の隠された歌詞が極めて興味深い。なお、「蛍の光」について中西は「(4番の歌詞を)大半の日本人は忘れてしまったが、沖縄県平和祈念資料館には日本帝国主義の負の遺産として歌詞を常設展示している」と指摘している。優しく美しい唱歌に隠されたナショナリズムを発見する一冊。(公)

子どもの貧困 未来へつなぐためにできること

渡辺由美子 著

  • 子どもの貧困 未来へつなぐためにできること
  • 渡辺由美子 著
  • 水曜社1400円
困窮家庭の子の学習支援など、子どもの支援に取り組む活動を行うNPO「キッズドア」代表の著者による書。  著者が活動を始めた10年ほど前と比べ、子どもの貧困をめぐる報道はふえた。しかし現在も7人に1人の子どもは相対的貧困状態にある。眼鏡を購入できない、給食のない夏休みはお昼ご飯も食べられないなど、学習支援を通して見える貧困の実態は深刻だ。その背景にあるひとり親の生活苦もある。さまざまな事情から、小中学校で学力が停滞したまま、将来をあきらめてしまう子も多い。だが丁寧に寄り添う学習支援により、子どもたちは学力と同時に意欲を取り戻す。経済格差に相関する教育格差を連鎖させてはいけない。  著者が最後に伝えるのは、国は教育にもっと力を入れるべき、企業を含む社会全体の参加が必要だということ。福祉ではなく将来への投資、としての教育の方向転換こそが大切、という言葉にうなずいた。(梅)
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 6カ月4,500円、1年9,000円
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