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ふぇみんの書評

PTA不要論

黒川祥子 著

    PTA不要論
  • 黒川祥子 著
  • 新潮社740円
 PTAの加入をめぐり熊本で起きた裁判。これにより、PTAは任意加入であることを初めて知った人も多い。今、なぜPTAが問題なのか。実際に経験した著者がその実態と問題点を明らかにする。  4月は保護者にとって憂鬱な季節。年度初めの保護者会で行われる役員決めは最初の難関。フルタイム勤務、ひとり親、介護中などの事情は考慮されることなく、一度役員にさせられれば、平日何度となく学校へ出向き、ベルマークや校外活動、文化活動に文字通り「身を捧げる」日々が待っている。  負担を担うのはほぼすべてが母親だ。学校と対等とは建前で、実態は学校行事と地域活動のお手伝い。アメリカから輸入されたシステムだが、前身を遡れば戦前の母の会にたどり着く。最終章で、著者は、国家の意思に連動するPTAは不要と言い切る。国や行政から動員要請を受けず、対等に教員と協力し合い、真に子どものためにできる活動について、今一度考えたいと思う。(梅)

現場とつながる学者人生 市民環境運動と共に半世紀

石田紀郎 著

  • 現場とつながる学者人生 市民環境運動と共に半世紀
  • 石田紀郎 著
  • 藤原書店2800円
  1940年琵琶湖の西岸に生まれた著者が、学者として公害問題に真剣にとりくんだ半世紀を記した書。ふぇみんは「ニッソール農薬裁判」と省農薬の「松本みかん」で著者にお世話になった。  農薬は殺虫・殺菌・殺草を目的とするものだから、本来は農毒である、と著者は農薬ゼミで語る。公害の現場に出かけると、下流から上流に遡って問題の本質に到着し、解明する。アルミニウム公害、琵琶湖汚染調査、飲み水調査、合成洗剤追放運動、干上がったアラル海とカザフスタン調査などなど。東の宇井純、西の石田紀郎と言われたのも納得だ。  第3次琵琶湖調査中に福島原発事故を知り、いちはやく十数名の研究仲間と連絡をとり、時の菅直人首相に声明文を届けた。槌田劭、熊取6人衆、原田正純、中地重晴、荻野晃也らが名を連ねる。原発事故は究極の公害と言い、今も福島原発告訴団関西を束ねる。活発で継続的な活動をする著者から、自ら動くことの大切さを学んだ。(天)

あいまいさを引きうけて 日常を散策するⅢ

清水眞砂子 著

  • あいまいさを引きうけて 日常を散策するⅢ
  • 清水眞砂子 著
  • かもがわ出版2200円
本書は『ゲド戦記』の翻訳で知られる児童文学者のエッセイ集。漢字の多くない文を好み、一旦捨てて醸成させて使うという意味の「コンポストする」といった、著者の言葉への感性も心地よい。  長年短大で教員を務めた著者は、学生たちが表現を急がされ、「すぐに言葉にならない思いを黙ったまま燠のように内に抱え込むことが許されない」今の教育に首をかしげる。また、自身の翻訳書で、「敗者」であっても勝気な強者の主人公に読者の多くが否定的な感想を寄せたことから、人々が「敗者」を「弱者」と固定的にみなしたがる傾向を指摘する。  児童書の傑作『トムは真夜中の庭で』の著者フィリッパ・ピアスと「女は強くなければ…」と語り合う対談と、鶴見俊輔との対談は読み応えあり。後者では女性言葉と文体論や『ゲド戦記』のフェミ的変容を語る。その視点でゲドを読みたくなった。  体中にじんわり広がる著者の文章に、浸ってみてはいかが?(三)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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