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ふぇみんの書評

源氏物語の教え もし紫式部があなたの家庭教師だったら

大塚ひかり 著

    源氏物語の教え もし紫式部があなたの家庭教師だったら
  • 大塚ひかり 著
  • 筑摩書房880円
サブタイトルからわくわくしてしまった。「優れた古典は優れたエンタテインメントであると同時に、実用書である」と、古典エッセイで著名な著者は言う。『源氏物語』を女子教育の書として読む、抱腹絶倒のエッセイだ。  宮中には陰湿ないじめ、セクハラやレイプもあれば、ダメ男にダメ女もウジャウジャいる。人生に苦労はつきものだが、シングルマザーとなった紫式部は、読み手を意識しながら、女子が生き抜く力をそこかしこに散りばめる。男に愛されるだけの女(桐壺更衣とか夕顔)には死を与え、源氏を巡るライバル女性には思いやりを示し、源氏に嫉妬の感情を露骨にぶつける紫の上を理想とし、自己肯定感も低いダメダメ女の浮舟には、自殺を試みた後、結婚しない道を選んでよみがえらせる…。「女を(誰かの身代わりとして)モノ扱いする男に逆襲するヒロインたち」との分析も小気味よい。『源氏物語』の面白さを再認識させてくれた著者と紫式部に乾杯!(ぱ)

ひだまり保育園 おとな組①~③

坂井恵理 著

  • ひだまり保育園 おとな組①~③
  • 坂井恵理 著
  • 双葉社①650円②690円③730円
 子育てをめぐるあらゆる事象は結局、社会=おとなの問題だということを、タイトルが教えてくれる。著者(本紙2017年2月25日号1面)が子育てを描けば、ほのぼの子育てマンガとは対極の、女が抱えさせられている痛みと迷いと苦しみをこれでもかと盛り込んだオムニバスマンガになる。  保育園落ちた問題、仕事とワンオペ育児と「名もなき家事」で疲労困憊の妻と、ライフスタイルが一切変わらない夫、現与党が勧める3世代同居で疲弊する祖母、大人が持ち込む子どもの美醜や児童ポルノの問題…。人手不足で疲弊する保育士たちや、集団保育の弊害にも切り込む。  さすが著者と思うのは、女たち(ゲイの男性保育士も)が軽やかにたたかうのだ、突きつけるのだ。ワンオペ育児の妻は夫に家事育児の完全分業を提案。その結果もまたリアル…。そして立場が違っても女たちの心がふんわりと響き合うのがいい。子どもの可愛さも遺憾なく描かれているのもまたいい!(登)

「ニッポン国VS泉南石綿村」製作ノート

原一男+疾走プロダクション 著

  • 現代オリンピックの発展と危機 1940-2020 二度目の東京が目指すもの
  • 原一男+疾走プロダクション 著
  • 現代書館 2300円
映画『ニッポン国VS泉南石綿村』は、『ゆきゆきて神軍』などの原一男監督が泉南アスベスト被害国賠訴訟を10年間にわたって撮った3時間半余の長編作だ。  自分の弱さを克服するために強い人=表現者を撮り、その典型が『ゆきゆきて神軍』の奥崎謙三だったという原監督。ゆえにアスベスト訴訟では、生活者=普通の人を撮っておもしろい映画ができるのかと悩みながら、同時に現在の日本の政治・行政・裁判システムの課題を描いたと監督は語る。  「産業社会の発展のために、命と健康が犠牲になるのはやむをえない」とした三浦高裁判決を覆し、裁判は最高裁で勝利する。  だが今、被害者は高齢化と石綿疾患で弱体化し、社会的には泉南は終わったという意識になっている状況だからこそ、多くの人に映画を見てほしいと、石綿被害と市民の会代表は言う。見てから読むか、読んでから見るか。(ね)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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