WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

  • HOME
  • >
  • ふぇみんの書評

ふぇみんの書評

私物化される国家 支配と服従の日本政治

中野晃一 著

    私物化される国家 支配と服従の日本政治
  • 中野晃一 著
  • KADOKAWA820円
森友・加計学園問題で国家を私物化する安倍政権。政治学者の著者は、安倍政治を日本や世界政治史の中で読み解き、改憲が迫る今の私たちの課題を明らかにした。  新自由主義と復古的国家主義を組み合わせた手法は安倍政権以前もあったが、安倍政治の強権性と非論理性、米国への盲目的追従は常軌を逸する。とはいえ、自称「改革派」の官僚等も安倍政治を支えており、またアンチ・リベラリズムを基にした国家の私物化は、トランプ政権ほか世界で見られるという指摘が新鮮だ。背景には冷戦後に新自由主義が世界を跋扈し、一握りの私企業が社会・経済を支配する中、多くの市民が自由や民主主義に幻滅している、と。  市民として行動してきた著者は言う。私たちにできることは、言論の自由を行使し、決して分断されず、抵抗すること。安保法制反対運動の時のように、そこから生まれる言葉や力を信じること。運動に忙しい私たちに、今必要な複眼的な視点をくれる。(登)

ジェンダー写真論 1991‐2017

笠原美智子 著

  • ジェンダー写真論 1991‐2017
  • 笠原美智子 著
  • 里山社2700円
  写真に込められたメッセージを読み解く力を与えてくれる本だ。東京都写真美術館などで長くキュレーターを務め、ジェンダー視点による展覧会を数々企画してきた著者が、シンディ・シャーマン、石内都、森栄喜など国内外の女性やLGTBの写真家、現代アート作家の作品を多数論じている。  登場する作家は、写真・美術のあり方や、社会の価値観を問い直そうとした人々だ。若さや老い、病、セクシュアリティー、民族、階級への偏見を告発したり、家父長制、戦争の加害性を表現する。ミソジニーが根深い日本でも、多くの女性アーティストが女性の置かれている状況や自分自身を見つ める意欲的な作品を発表している。  「(力のある作品は)観た人が他人事として素通りできない」と著者はいう。魂が揺さぶられる作品と出合った時、その揺さぶりの本質を探りたい。本書はその思考の助けとなり、鑑賞の面白さを伝えてくれる。「フェミニズムとは共生の思想」の言葉に頷く。(う) 

ようこそ、難民! 100万人の難民がやってきたドイツで起こったこと

今泉みね子 著

  • 今泉みね子 著
  • 合同出版1500 円
ドイツには2015年から2年間、中東やアフリカから100万人超の難民がたどり着き、定住を求めた。だが、思考や習慣の違いなどから地域住民と大小の軋轢が生まれた。本書はドイツ在住の日本人が描く、揺れるドイツ社会と少年マックスの家族をとりまく小説。  マックスのクラスに中東出身のアフナンとタミムが転入してくる。マックスの母は難民家族に手を差し伸べるが、父は乗り気でない。クラスではいじめが始まる。マックスは次第にアフナンたちと仲良くなる。だが町では事件が起きて-。町や学校の取り組みで難民への理解が深まるなか、マックスは自分の祖父も難民だと知る。  現実の出会いが人を変えることができるのか。考え方や習慣の違いを乗り越え、理解し合うには何が必要かが、突き付けられる。なぜドイツに殺到したのか。あとがきが、ヨーロッパ事情の理解を助ける。  他者を受け入れることは自らを豊かにする。日本にいる私たちも問われている。(三)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
このページのTOPへ