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ふぇみんの書評

〔増補新装版〕優生保護法が犯した罪 子どもをもつことを奪われた人々の証言

優生手術に対する謝罪を求める会 編

    〔増補新装版〕優生保護法が犯した罪 子どもをもつことを奪われた人々の証言
  • 優生手術に対する謝罪を求める会 編
  • 現代書館2800円
旧優生保護法による強制不妊手術は、マスコミ報道がされ、被害者救済に向けた動きが出てきた。優生手術の実態解明と被害者への謝罪と公的な補償を求める「優生手術に対する謝罪を求める会」が発足したのが1997年。だから“やっと”なのだが、救済の動きは加速してもらいたい。本書は2003年に出された旧版に、新たな被害証言や豊富な資料を追加した、待望の増補新装版だ。  ハンセン病など遺伝性疾患以外にも対象を拡大した優生保護法下で、「不良な子孫の出生の防止」という目的で強制不妊手術などを受けさせられた人々。体や心を傷つけられ、人間の尊厳も権利も奪われた被害者たちの証言は苦しく、重い。ドイツやスウェーデンの公的補償も参考になる。国家から産めとか、産むなと言われ、生まれていい・いけない命が選別されるなんてまっぴらだ。この問題は被害者だけの問題ではな!(ん)

トマト缶の黒い真実

ジャン=バティスト・マレ 著 田中裕子 訳

  • トマト缶の黒い真実
  • ジャン=バティスト・マレ 著 田中裕子 訳
  • 太田出版1900円
 本書は原題を「L'EMPIRE de L'OR ROUGE(赤い黄金の帝国)」という。黒い黄金=「石油」をもじり、トマトをめぐるグローバル資本主義を皮肉ったのだ。著者は新進気鋭のジャーナリスト。ネット通販大手アマゾンに潜入したルポはベストセラーになった。その捨て身の取材が、本書ではトマトの黒い真実を暴き出す。  ケチャップやピューレなどトマト加工製品を扱う企業は多いが、多くは産地が同じトマトを使用している。例えば中国・新疆ウイグル自治区で生産されたトマトが世界をめぐり、イタリアに輸出されたものはそこで加工され、イタリア産となって巨大消費地アフリカに輸出される。ラベルには本当の産地はない。イタリア産のほうが売れるからだ。腐って黒くなったものを着色し薬品でトロミをつけたものを、人々はトマトといって買う。  本書は搾取・貧困・格差という問題とともに、「食の安全」を告発している。私たちは一体何を食べさせられているのだろう。(ぶ)

モスクワの誤解

シモーヌ・ド・ボーヴォワール 著 井上たか子 訳

  • モスクワの誤解
  • シモーヌ・ド・ボーヴォワール 著 井上たか子 訳
  • 人文書院2200円
ボーヴォワール(1908~86)が1967年に執筆した小説の初訳。没後30年の今なお、新刊が発行されるとは驚きだ。  著者を想起させる初老の妻ニコルと、夫アンドレ。二人がモスクワに住む娘を訪ねる旅の中で、妻と夫の双方の語りにより、長年に積もった互いへの不満や恨みがつづられる。加えて、60年代のソ連や共産主義への共感と失望(まさにボーヴォワールとサルトル!)、老いへの不安、過去への郷愁。そして、何者にもならなかった自分やフェミニストとして筋が通せなかった嘆き、若さへの嫉妬など、いらだちが重なり合う。  「女の子」が抱く劣等感や野心、自分の生活を自分で決断できないもどかしさ。まさにフェミニズムだ。そんなニコルのつぶやきが自分に跳ね返り、淡々と進行する中で炎で炙られるように胸が締め付けられた。誰しも思う、こんなはずじゃ…、に共感する。  翻訳のニコルの女っぽい語り口が気になった。(三)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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