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ふぇみんの書評

フェミニズム/ジェンダー批評の現在 現代女性文学を読む 山姥たちの語り

杉山秀子 著

    フェミニズム/ジェンダー批評の現在 現代女性文学を読む 山姥たちの語り
  • 杉山秀子 著
  • 論創社3000円
 本書の山姥は、人を喰い殺すような鬼女ではなく、山奥に一人住む生き残りの達人としてイメージされ、女性に課せられた規範や制約を超越して、新たな生き方を模索する日本女性の原型を象徴する存在とされる。  水田宗子が、山姥の視座からどう読むかという序論を提起し、円地文子、津島佑子、角田光代、多和田葉子、林京子、柳美里、石牟礼道子等の作品を、各研究者が批評。テーマは、老い、戦争、母性、原爆、家族、水俣とさまざまだが、その根底には、山姥に形象される何ものにも支配されない生き方を創造し、内面表現を磨く、作家それぞれの葛藤と工夫が読み解かれる。死ねない老人と虚弱体質の曾孫を中心にしたディストピア小説「献灯使」(多和田葉子)に、希望を見出す論評が印象深い。  現代日本女性文学の多様性と力強さ、フェミニズム/ジェンダー批評の今が体感できる。(晶)

コロンタイ 革命を駆けぬける

山根実紀 著 山根実紀論文集編集委員会 編

  • コロンタイ 革命を駆けぬける
  • 山根実紀 著 山根実紀論文集編集委員会 編
  • インパクト出版会3000円
ロシアの女性革命家であったコロンタイ。女性解放論を軸に、彼女の生涯や著作について、ロシアの女性の状況も絡めながら分析している興味深い本が出た。  コロンタイは、1917年に誕生したソビエト政権で、「母子保護課」を創設し、産前産後の有給休暇や母親への手当支給を制定。婚姻と離婚の自由、庶子と嫡子の同権などの保障を規定する女性政策にも関わる。マルクス主義の観点から女性労働者の権利、男女平等を訴えた。彼女の自由恋愛論や性道徳論は内外で激しい批判にさらされたが、当時の社会的状況に照らし合わせた分析や、日本における偏向的な紹介も検討が必要と著者はいう。スターリンから追放され外交官として各国に派遣されるが、世界初の女性大使として活躍。社会の不平等への異議や反戦を唱えた生き方にも魅了される。  女性問題が山積みのロシアと日本…。女性の解放を急進的に実現しようとしたコロンタイの再評価を試みる意欲的な書だ。(く)

水子供養 商品としての儀式 近代日本のジェンダー/セクシュアリティと宗教

ヘレン・ハーデガー 著 塚原久美 監訳

  • 水子供養 商品としての儀式 近代日本のジェンダー/セクシュアリティと宗教
  • ヘレン・ハーデガー 著 塚原久美 監訳
  • 明石書店4000円
 1970年代から一大ブームとなった水子供養。本書は米国の宗教学者である著者により97年に刊行された。江戸時代の習俗から、メディアの「人生相談」に見る中絶の実態と水子の関係、宗教界や地方での供養の実態など多方面から、ジェンダーの視点で書かれている点が、今も新しい。  水子供養は、オカルトブームを背景に、商業主義的な霊能者によって商品として仕組まれたと著者。そこには男の責任を問わず、女性蔑視と胎児中心主義のレトリックがある。習俗や、仏教ほか宗教教義からも外れ、“水子の祟り”が浸透していないことも明らかに。ただ地域によって、20~40年生まれの女性たち(避妊道具が未発達)、男性たちによって水子供養が担われていたことは興味深い。  水子ブームは去ったが、日本の中絶技術の遅れの原因ではないかという監訳者(2014年本紙に「中絶考」連載)の指摘に頷く。(登)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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