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ふぇみんの書評

主権なき平和国家 地位協定の国際比較から見る日本の姿

伊勢﨑賢治、布施祐仁 著

    主権なき平和国家 地位協定の国際比較から見る日本の姿
  • 伊勢﨑賢治、布施祐仁 著
  • 集英社クリエイティブ1500円
米軍や米兵による事件・事故が起きても、何もできない日本。立ちはだかるのが日米地位協定。しかし地位協定は“仕方のない”ものか? PKOで武装解除に携わった伊勢﨑とジャーナリストの布施が、独、伊、韓国、フィリピン、アフガニスタン、イラクの地位協定を徹底比較。機密文書などからも日本の有り様を詳らかにする。  他国は主権の回復に伴い、あるいは事件・事故が起こる度に地位協定の交渉を行い、刑事裁判権や基地管理権をめぐり主権を確保できるようにしてきた。一方日本は密約などで刑事裁判権を自ら放棄し、基地管理権を米軍に全面的に委ねる。ほかに際限のない全土基地方式や思いやり予算も。主権を放棄した異様な国、日本。独自外交もできず、ジプチに対し不平等な地位協定を結ばせ、米国の戦争体制の中で”平和”を享受している、と。  日米地位協定改定には国民運動が必要、と著者ら。改憲よりも地位協定改定。右派も左派もここは一致するのでは?(登)

オモニがうたう竹田の子守唄 在日朝鮮人女性の学びとポスト植民地問題

山根実紀 著 山根実紀論文集編集委員会 編

  • オモニがうたう竹田の子守唄 在日朝鮮人女性の学びとポスト植民地問題
  • 山根実紀 著 山根実紀論文集編集委員会 編
  • インパクト出版会3000円
「活動家であり、研究者」として生き、29歳で亡くなった山根実紀が残した修士論文、エッセイなどを収めた遺稿集。  植民地主義を未清算のままにするこの国で彼女は、民族・階級・性差が重層的に絡み合う複合差別により学習機会を奪われた在日朝鮮人女性の夜間学校等での学びについて研究しつつ、日朝連帯、反ヘイトなどの運動を担った。オモニたちの識字・学びへの要求に応える夜間中学、しかし、日本人教師による(日本語)識字支援には植民地主義的権力関係の再生産、同化の側面はないのか、山根はそこに両義性を見出す。運動に身を置きつつ、それは自分の「承認欲求」の故ではないかと自問・自責もする。  加害者-被害者に分断された関係をどう乗りこえ、新たな関係性を築いていくか、その課題を一身に背負って生きた山根の苦闘にどう応えるか、本書はそれを私たちに問いかける。(ひ)

市民政治の育てかた 新潟が吹かせたデモクラシーの風

佐々木寛 著

  • 市民政治の育てかた 新潟が吹かせたデモクラシーの風
  • 佐々木寛 著
  • 大月書店1600円
政治に関する話題を避けたがる人が多いが、それでいいのか。本書は国民主権や参加民主主義とは何かを具体的に考える好材料だ。  2015年暮れ、野党共闘を模索するため、新潟の人たちが立ちあがった。16年の参院選と原発再稼働を問う新潟知事選をめぐり、国家と金を後ろ盾にした権力構造に対して市民と野党が結束して闘いを挑み、地域の自己決定権を回復した記録である。著者はその中心となり、市民連合@新潟を立ち上げた。ここで描かれるのは奇跡などではなく、また〈お上vs下々の民〉という単純な対決の図式でもない。市民こそが政治の主体であり、地方自治の重要性を再確認させるエポックだと理解しよう。  変化は常に周辺から起きる。沖縄もまた、然り。著者は市民政治と市民社会という2つの用語を使い分けているが、市民が積極的に政治に参画しない社会は市民社会とは呼べない。自立した個人が存在してこそ、民主的な集合体を築くことができるのだから。(た)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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