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ふぇみんの書評

児童虐待から考える 社会は家族に何を強いてきたか

杉山春 著

    児童虐待から考える 社会は家族に何を強いてきたか
  • 杉山春 著
  • 朝日新聞出版760円
2000年愛知県武豊町3歳児餓死事件、10年大阪2幼児置き去り死事件、14年神奈川厚木男児遺体放置事件…加害親は、「残酷な親」と断罪される。本当にそうか、なぜ起こったのか、幼い命をどう守るのか―。加害親などへの丁寧な取材で真摯にその問いに取り組んできた、ルポライターの著者。本書は、積み重ねてきた取材の集大成と、未来への提言の書だ。  加害親は「極悪人」でなく「生真面目」。幼少期に虐待を受けたり、見えづらい障害を抱え、自己尊重感・他者への信頼がない故に、社会の「家族規範」に縛られ追い詰められる。著者は「難民のよう」と。かつて取材した、性を差し出し、我が子の死を願いながら旧満州国から帰国した女性の苦しさを想起するのは、著者ならではの視点。  貧困をなくし、新「社会的養育ビジョン」(16年)が示すように、早い段階から適切に大人が関わる―。著者の示すベクトルの確かさ、自民党の「家庭教育支援法案」の底の浅さを実感する。(登)

母親の孤独から回復する 虐待のグループワーク実践に学ぶ

村上靖彦 著

  • 母親の孤独から回復する 虐待のグループワーク実践に学ぶ
  • 村上靖彦 著
  • 講談社1200円
児童相談所への子ども虐待の相談件数は、現在10万件を超えている。虐待してしまう母親は、多くが子どもの頃に自身が虐待を受けて育った経験があり、経済的困窮や孤立など、社会的な理由を抱え、虐待へと追い込まれている存在だ。本書は、「MY TREE ペアレンツ・プログラム」という虐待からの回復プログラムのフィールドワーク記録である。  さまざまな傷を負った母親たちが、最初は恐る恐る参加しながら、回を重ねるごとに変化していく様子が描かれる。3人のファシリテーターは、つかず離れずほど良い距離を取りつつ、必要に応じてスッと引き、母親たち自身のパワーを引き出す。  類似のプログラムが、当事者の変化だけを追求することに疑問を感じていた。変えなければいけないのは社会のほうではないのかと。「問題は虐待ではなく孤立、世界とつながり直す」という文言は心強いが、社会構造を捉え直す視点がそこに加われば、社会性も広がるだろう。(順)

あなたが気づかないだけで 神様もゲイもいつもあなたのそばにいる

平良愛香 著

  • あなたが気づかないだけで 神様もゲイもいつもあなたのそばにいる
  • 平良愛香 著
  • 学研プラス1300円
著者は男性同性愛者をカミングアウトした後、キリスト教の牧師になった最初のケースだという。沖縄に生まれ、自分はゲイかも、と感じた性的指向が確信になり、悩みつつ、友人や兄弟や親にカミングアウトしていく。同性愛に否定的と思われているキリスト教界で、差別に遭ってヘコむ。牧師になる過程で周囲は紛糾したが、それが変化をもたらすことにも。そしてマイノリティー差別に抗し、家父長制や女性差別も語る牧師になる。キリスト教界内部の旧弊もつき、社会の縛りからの解放をめざすのが著者のスタンスだ。「僕の話を鵜呑みにしないでほしい」という。読み手、聞き手(大学で「性倫理とキリスト教」を教える)に自分で考えることを促す。  彼氏やセックスのことなど、時に脱線もする語り口についのせられるが、自分を偽りたくない、性をタブーにしないという著者の生き方に励まされる。(三)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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