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ふぇみんの書評

日本とフランスのあいだで 思想の軌跡

棚沢直子 著

    日本とフランスのあいだで 思想の軌跡
  • 棚沢直子 著
  • 御茶の水書房4600円
ボーヴォワール、クリステヴァ、イリガライ、コフマンなどの女性思想家と1970年代女性運動(ウーマンリブ)に魅せられつつ、日本とフランスを行き来してきた著者。その思索をまとめた分厚い一冊は、キリスト者である母の呪縛から逃れ、産むことを選ばずにきた女が高齢出産し、大学教員としての仕事と子どもの「世話労働」の日々から新たな解放像を模索する営みでもある。差異と平等、身体の自己決定権と優生思想、共犯的主体性などの抽象概念と、結婚、離婚、羊水チェック、両親の看取りといった個人史の交錯が、本書の魅力だ。行間から著者の声が聞こえ、身ぶり手ぶりが思い浮かぶ。  「不倫」をめぐる日仏比較はまさに今日的話題! 戦時中に特攻機「桜花」の、戦後は新幹線やモノレールの設計に携わった三木忠直という父についての書き下ろしも印象深い。思想は、その人が息をしてきた環境から、有形無形の影響を受けるのだと、しみじみ感じる。(香)

江戸の異性装者たち セクシュアルマイノリティの理解のために

長島淳子 著

  • 江戸の異性装者たち セクシュアルマイノリティの理解のために
  • 長島淳子 著
  • 勉誠出版3200円
セクシュアルマイノリティについて書かれた興味深い本だ。著者は江戸時代に生きた異性装者(クロスドレッサー)やトランスジェンダー、同性愛の人々をさまざまな資料から掘り起こした。女性として生まれたが長じて男装となり、幕府から禁止されてもやめず、島送りの厳刑に処された「たけ」をはじめ、彼女・彼らの生きざまや、権力や世間の反応を考察している。  著者は、諸外国と比較して、江戸時代が男色や同性愛に対して寛容で緩やかな時代であったとする論調には別の視点か ら問題提起をする。幕府は日常的な異性装が男に対して寛容であっても女には厳しく、主従関係のない同性の結びつきを排斥するなど、幕藩体制維持や「家」・共同体など、再生産に抵触するものは否定していると指摘。多様な性・性愛の存在をあらためて認識するとともに、男尊女卑の根深さ、権力側の思惑、社会規範、少数者の人権などを考えさせられる貴重な研究書だ。(く)

仕方ない帝国

高橋純子 著

  • 仕方ない帝国
  • 高橋純子 著
  • 河出書房新社1600円
朝日新聞政治部次長だった著者の4本の書き下ろしに加え、折々の政治・社会状況を書いた連載「政治断簡」、鳩山友紀夫元首相、斎藤環、白井聡などへの10本のインタビューを再録する。  週刊新潮に腐されながらも、著者の筆勢はいささかも衰えない。マツコ・デラックスの「だれもが不快な思いをすることなく読める新聞をつくろうなんて、初めから闘う意志がないわよ。新聞は公平じゃなくていいのよ」という言葉が糧になる。  丸山眞男の「現実的たれということは、既成事実に屈服せよということにほかなりません」の言葉をひき、対米従属は仕方がない、米軍基地の沖縄集中も、原発再稼働も仕方ない…、現実追認の無限ループに落ち込んだ「仕方ない帝国」に生きてて楽しいかと著者は問う。  痛快な安倍政権批判に溜飲を下げるだけに終わってはならない。国に拠らずひとりで立て、自由であれと示す言葉に、自分の在り様を突きつけられる。(ね)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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