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ふぇみんの書評

男が痴漢になる理由

斉藤章佳 著

    男が痴漢になる理由
  • 斉藤章佳 著
  • イースト・プレス1400円
痴漢は「性依存症」で、刑罰よりも長期の治療が必要だと言ったら、「声を上げる被害者もまだ少ないのに、なぜ加害者に注目を?」とあなたは思うだろうか。本書は、民間で性犯罪治療、再犯防止プログラムを12年行う著者が、痴漢の実態を詳らかにし、その撲滅に向けた方策を示したものだ。他類型の性犯罪に当てはまることも多く、示唆に富む。  痴漢をする人は、自己評価が低く、ストレス対処法の選択肢が少ない「四大卒で会社勤めをする、働きざかりの既婚男性」。世にはびこる「女も喜んでいる」という認知の歪みをベースに、スリルと支配欲を満たすことを“生きがい”とする性依存症者、と著者。彼らには逮捕・刑罰が効かず、再犯を繰り返す。必要なのはストレス対処法や“生きがい”を作ることも含めた長期治療で、認知の歪みに気づかせること。そこに公費をと訴える。  本気で痴漢を撲滅するために、私たちも加害者に向き合うときなのかもしれない。(登)

日本人の朝鮮観はいかにして形成されたか

池内敏 著

  • 日本人の朝鮮観はいかにして形成されたか
  • 池内敏 著
  • 講談社2200円
本書は、江戸時代から朝鮮半島を植民地にした時代まで、日本人の朝鮮観が、どのように表れ、推移してきたかを論述。紀行文、日記、歌舞伎、小説、絵画まで、さまざまな資料からていねいに読み解いている。漂流民、朝鮮通信使などを通して人々が接触・交流し、憧れや軋轢などがあったこと、日本が以前、竹島と呼んだ現・鬱陵島に対する、江戸幕府、対馬藩などの各藩、朝鮮政府の認識の違いなどに興味をひかれた。  著者は、「日本人の朝鮮観」が、忘却と再発見の繰り返しであり、決して固定的なものでないとする。また、「鮮人」など「鮮」系用語が社会的蔑称として機能した点は重視するが、最初からの蔑称ということには異を唱え、不条理な力関係の中で蔑称としての内実をもつようになったと主張する。竹島の領土問題と同様、朝鮮観も定説や先入観を排し、歴史的経緯を見直すことが必要だと感じた。(ぱ)

葭の堤 女たちの足尾銅山鉱毒事件

秋山圭 著

  • 葭の堤 女たちの足尾銅山鉱毒事件
  • 秋山圭 著
  • 作品社1800円
足尾銅山の銅精錬による環境破壊は日本初の公害事件であり、その責任を国や県に対し鋭く追及した田中正造という象徴的人物の思想と行動により後世に語り継がれた。被害にあった栃木県谷中村の住民たちも、「押出し」(現在のデモ)をするなどして強制排除に抗議したが、その中に村の女性たちの記録はない。だが名がなくても世に残したい女性たちの存在を知った著者が5人の女性に光をあて、行動や揺れ動く気持ちを小説に表した。  チヨとユウは、田中正造の支援者として谷中村に通う女性解放運動家・福田英子の影響を強く受ける。とりわけユウは、渡良瀬貯水池計画によって村や家を捨てさせようと迫る役人たちに一人対峙した。葛藤する土地「買収員」の妻・トシや田中正造の妻・勝子も、自身の言葉を持つ女性として描かれる。  貯水池に茂る葭の原に埋もれそうな女性たちが生き生きと立ち現れる。女性たちの、女性たちによる情の通った歴史が見えた。(三)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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