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ふぇみんの書評

労働者階級の反乱 地べたから見た英国EU離脱

ブレイディみかこ 著

    労働者階級の反乱 地べたから見た英国EU離脱
  • ブレイディみかこ 著
  • 光文社820円
2016年6月、EU離脱派が勝利した英国国民投票は世界中を驚愕させ、多くの離脱票を投じた「白人労働者階級」は「不寛容な排外主義者」とされた。在英20年の保育士兼ライターであり貧困地区に住む著者の、連れ合いや労働者階級の友人らは皆「離脱派」。「EU離脱」が真に意味することは-著者は、地べたの人々からの聞き取りや、英国労働者階級100年の歴史などをひもとき、明らかにする。  緊縮財政で生存基盤が破壊される中、今や「ニュー・マイノリティ」とされる「白人労働者階級」が支配層を「本気でビビらせた出来事」が、EU離脱だと著者はみる。歴史を見れば、労働者階級は支配層をこれまでもビビらせてきたし、排外主義も緊縮財政が培養した。「白人」と「それ以外」に分断された労働者階級を、今こそ捉え直し、政府の失策を問うべきと著者。  反乱の歴史では、女たちのあっぱれな闘いも。誇り高い労働者であるため、私たちに何が必要なのかを深く考えさせられた。(登)

ハリウッド「赤狩り」との闘い 『ローマの休日』とチャップリン

吉村英夫 著

  • ハリウッド「赤狩り」との闘い 『ローマの休日』とチャップリン
  • 吉村英夫 著
  • 大月書店1800円
著者は映画評論家、そして「映画人九条の会」会員。本書は1940年代後半から50年代にハリウッドを席巻した「赤狩り」(共産党員らの追放)の時代に、裏切りや密告などの葛藤を経て、映画人らがいかに復活を遂げたかを描く。  中でも著者は喜劇王のチャップリン、そして『ローマの休日』で名高いウィリアム・ワイラー監督に注目。『ローマの休日』のような一見ユーモアに溢れ爽やかな恋物語に、赤狩りとの緊迫した闘いが隠されていたことを踏まえ再度作品を鑑賞すると、また違う発見があろう。ハリウッドのカリスマたちの、一人の人間としての光と影が垣間見え興味深い。  第2次世界大戦後、アメリカの為政者らは、やっと訪れた平和は経済発展に必ずしも役に立たないと、「反ソ反共」を掲げ、その足掛かりを、大衆の絶大な支持を誇るハリウッドに見出そうとした。だが、密かにリベラリストを貫いたワイラーのような人物がいたことを、私たちは忘れてはならない。(タ)

〈女帝〉の日本史

原武史 著

  • 〈女帝〉の日本史
  • 原武史 著
  • NHK出版900円
持統天皇、北条政子、北政所など、古代から近代まで、女性天皇や皇后、将軍の正室や母などの女性権力者にスポットを当てた日本史だ。東アジアとも比較しながら女性がどのように権力を握り、遠ざけられたのかを読み解く。  著者は日本では女性の政治家が極端に少ない理由として、日本固有の事情があるとし、その一つに「男系イデオロギーによって隠蔽された歴史」を挙げる。女性天皇が続いた奈良時代、天皇や将軍などの母が権力を持った平安から安土桃山時代を経て、江戸時代には「母」の権力が封じ込められ、明治以降は、皇后は天皇を陰で支える存在になり「祈る」主体として登場したという。近代以降に強まった女性の権力を「母性」や「祈り」に矮小化する傾向が、今でも影響を及ぼしているという見方に頷く。淀を淫婦にし、称徳天皇の性豪説を何度も再生産し、女性を権力から遠ざけてきたことにも注目したい。歴史は権力に都合よく利用され変えられるから怖い。(ん)
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