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ふぇみんの書評

ベル・フックスの「フェミニズム理論」 周辺から中心へ

ベル・フックス 著 野﨑佐和、毛塚翠 訳

    ベル・フックスの「フェミニズム理論」 周辺から中心へ
  • ベル・フックス 著 野﨑佐和、毛塚翠 訳
  • あけび書房2400円
アフリカ系米国人のフェミニストの著者による、フェミニズム思想の教本というべき書。初版は1984年。本書は2015年の3版の翻訳だが、内容が古びるどころか、フェミニズムに出合い20年弱の日本人の私にビシビシと伝わる。  フェミ活動をした人なら経験したであろう、運動内部の抑圧、反目、運動が外に広がらないこと…。著者は、運動や理論がブルジョア階級の白人女性たちに支配されていると告発し、女の「共通の経験」という欺瞞を暴き、フェミが白人男性からの力の奪還や、高キャリア志向、家庭生活や子育ての否定などに矮小化されたと指摘。フェミニズムとは、性差別をはじめ階級や人種などあらゆる支配・抑圧をなくす社会運動であり、すべての人に必要なものである、と。  これからの私たちに必要なのは、血肉と化した自らの差別・抑圧思想を絶えず質し、多様な女との率直な対話と、それに基づく運動の戦略。まだ間に合うのか。間に合うと信じたい。(登)

マッドジャーマンズ ドイツ移民物語

ビルギット・ヴァイエ 著 山口侑紀 訳

  • マッドジャーマンズ ドイツ移民物語
  • ビルギット・ヴァイエ 著 山口侑紀 訳
  • 発行 花伝社 発売 共栄書房1800円
旧東ドイツに住んだアフリカ・モザンビークの人々を描いた漫画。著者はドイツ人。幼児期のアフリカ滞在経験から、「マッドジャーマンズ」と呼ばれるドイツ帰りのモザンビークの人々に関心を持った。時代・地域に共通の「移民」観を考えさせられる。  ベルリンの壁崩壊前の時代のモザンビークは社会主義国家で、内戦の混乱期でもあった。モザンビークは外貨稼ぎとして若者を旧東ドイツへ送り出し、旧東ドイツも低賃金労働者を必要としていた。彼ら・彼女らは、国策の狭間で重層的な差別や暴力(性暴力含む)に翻弄され、その一方で青春も人生も謳歌する。著者は、トニ、バジリオ、アナベラという3人のマッドジャーマンズを造形し、人生を変えようともがき苦悩する姿を描く。移民としてドイツに残る者は生き方を探し続け、帰国する者は母国の疲弊を目の当たりにする。  エキゾチックな花や動物の描写、線の太さを使い分ける大胆かつ繊細な絵も魅力的。(三) 

沖縄のアイデンティティー 続 沖縄の自己決定権

新垣毅 著

  • 沖縄のアイデンティティー 続 沖縄の自己決定権
  • 新垣毅 著
  • 高文研1600円
琉球新報記者の著者が、日本復帰運動から沖縄のアイデンティティーを考え、同時に日本を問う。  復帰運動は、憲法で平和や人権が保障される「日本国民」への「復帰」により、米軍政下の状況を打開しようと始まった。だが、1970年頃、返還協定と沖縄の要求との乖離が明らかになると、復帰を根本的に問い直す議論が起こる。著者は、大田昌秀元県知事や作家・大城立裕、思想家・新川明、川満信一らの議論から、ここで「沖縄の自立」が徹底的に検討され、実践的主体としての「沖縄人」が現れたと分析する。  今、沖縄は、基地に未来を奪われないために「自己決定権」を行使し、「平和を担う懸け橋」になろうとする。一方、日本では政治家やメディアが、「日米同盟」維持のために沖縄問題を矮小化し、偏見やヘイトが蔓延していると指摘する。日本人はやめられないが、植民者はやめられると著者はいう。「醜い日本人」(大田昌秀の言葉)をやめることができるのか、私たちにかかる。(ね)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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