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ふぇみんの書評

ジェンダー研究を継承する

佐藤文香、伊藤るり 編

    ジェンダー研究を継承する
  • 佐藤文香、伊藤るり 編
  • 人文書院4800円
ジェンダーやセクシュアリティーの視角を取り入れた研究の「パイオニア」21人に、後続世代が聞き取りしたインタビュー集。研究への思いや困難さだけでなく、政治や運動とのかかわり方、生い立ち、半生が語られ、“一般書”として楽しく読める本だ。  「何でわざわざそんなこと聞くの?」「権力にすり寄ったって言いたいわけ?」と言う受け手。「単なる傾聴による記録集ではなく挑戦的な対話により解題や分析を付した成果物にすることを目指そうとした」とあるように、聞き手たちとのやりとりや、激動の時代を生きた先達の挑戦を、後輩たちが分析し、どう継承していくかを見出す過程が興味深い。平和が脅かされている現況に、「ここまできたのは、(有権者が男より多い)おんなたちの責任」(もろさわようこ)、「おんなじ歌だけど、違う声で何度も何度も、絶対忘れないように若い人の声で歌ってもらわないといけない」(上野千鶴子)など、開拓者たちの言葉が心に響く。(よ)

若槻菊枝 女の一生 新潟、新宿ノアノアから水俣へ

奥田みのり 著

  • 若槻菊枝 女の一生 新潟、新宿ノアノアから水俣へ
  • 奥田みのり 著
  • 発行 熊本日日新聞社 発売 熊日出版1500円
東京・新宿の伝説的バー「ノアノア」の経営者だった若槻菊枝の生涯を描いたノンフィクション。大胆かつ繊細で、魅力的な若槻の人物像を、本人筆の半生記をひもとき、最大の理解者だった19歳も年下の夫や元客など関係者から聞き、その分厚い人生を著した。  ノアノアの最盛期は1960~70年代。社会が大きく動いた時代の混沌とした新宿で、流行のダンスやバンドを取り入れつつ、革命歌やロシア民謡も歌われて、文筆家や役者などのたまり場になったという。そんな中、常連客から教えられ水俣を知って、後半生は水俣病の被害者たちを物心共に力強くサポートした。若槻の父は、新潟で小作争議の指導者だったという。その父親譲りと言われる気性で、弱い人・貧しい人の暮らしが骨身に染みていた行動に胸がすく。  若槻は引退後、絵を描く生活に没頭したが、水俣支援は続けた。彼女亡き後も遺志によりケアホームが建てられた。ユニークな「女の一生」に引き込まれる。(三)

サフラジェット 英国女性参政権運動の肖像とシルビア・パンクハースト

中村久司 著

  • サフラジェット 英国女性参政権運動の肖像とシルビア・パンクハースト
  • 中村久司 著
  • 大月書店2000円
英国在住の著者が、女性参政権獲得運動に取り組んだ「女性社会政治同盟」(WSPU・通称:サフラジェット)の歴史を詳説する。映画『未来を花束にして』が昨年、日本でも公開されたが、それは活動のごく一部と著者は言う。  WSPUは、エメリン・パンクハーストと娘クリスタベル、シルビアを中心に1903年に設立される。100年も前に、度重なるデモと集会を行い(25万人の集会も!)、激しい弾圧により、繰り返し逮捕、投獄されながらも参政権を求めた女性たちの熱い思いと行動に圧倒される。30歳以上の女性参政権を認める法律は1918年に成立。最初の請願提出から、85年目だ。  ロンドン・イーストエンドの労働者地域で、参政権獲得と困窮者支援などに身を挺すシルビアの人生に一章をさく。第1次大戦時、反戦の立場で、無料ミルク配布や原価食堂、教育に取り組んだ活動は示唆に富む。一方、戦争ではWSPUも主戦派となってしまう。なぜかを問うことも大きな課題だろう。(ね)
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 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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