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ふぇみんの書評

国家がなぜ家族に干渉するのか 法案・政策の背後にあるもの

本田由紀、伊藤公雄 編著

    国家がなぜ家族に干渉するのか 法案・政策の背後にあるもの
  • 本田由紀、伊藤公雄 編著
  • 青弓社1600円
家庭教育支援法、親子断絶防止法、「官製婚活」、自民党改憲草案24条…安倍政権が“家族”政策として打ち出す法案や政策を議論した、17年1月の日本学術会議公開シンポジウムを取りまとめた。執筆者はほかに二宮周平、千田有紀、斉藤正美、若尾典子で、政策の目指すところを詳らかにする。  ばらばらに見えるこれら法案や政策は、復古的な安倍政権の家族観(個人の尊厳を奪い国家に奉仕する家父長的な自助集団)に基づきそれを一律に強要するという性格を持つ。「戦争できる国」に向け社会を根底から変えるための、最大の標的が家族なのだ。「支援」という文言が入っても、世界人権宣言と似た文言があっても、イデオロギーを強要するばかりで、貧困やケア労働への支援など真に求められる家族支援は行わない。これは、家族の多様性を認めた上で家族支援を行う世界の潮流と真逆だ。  貧困、暴力、家族の多様性を切り捨てるこれら政策を見極め、知らせ、止めたい。(登)

舞台の上のジャポニスム 演じられた幻想の〈日本女性〉

馬渕明子 著

  • 舞台の上のジャポニスム 演じられた幻想の〈日本女性〉
  • 馬渕明子 著
  • NHK出版1600円
19世紀後半、パリの舞台では芸者、大名・町人の娘、ミカド、将軍などの“日本人”が演じられ、ジャポニスムがブームとなった。西洋美術史が専門の著者は、当時の様々な舞台資料から、日本人がどのようにイメージされていたのかを読み解く。ポスターや舞台装置スケッチに描かれる滑稽な日本女性、荒唐無稽なストーリーに思わず笑ってしまう楽しい本だ。  だが、笑ってばかりもいられない。教養があり自立的に描かれる西洋女性とは違い、日本女性は受け身的で可愛く、子どもっぽさが特徴で、西洋男性にとり、好都合でエキゾチックな魅惑的な存在として描かれた。日本男性は“没個性”。「切腹」を野蛮と捉えるなど、西洋から見た日本は遅れた国であり、日本人に対しても人種差別的なまなざしがあった。現在でもこうしたジャポニスムは残存する。観光政策など経済効果として活用され、ステレオタイプの日本像の伝播に日本自らが手を貸しているという指摘に頷いた。(う)

「子どもの貧困」を問いなおす 家族・ジェンダーの視点から

松本伊智朗 編

  • 「子どもの貧困」を問いなおす 家族・ジェンダーの視点から
  • 松本伊智朗 編
  • 法律文化社3300円
「子どもの貧困」が社会的に認知されるようになって約10年。今では「子ども食堂」が大流行し、子どもたちに無償で勉強を教える「学習支援」も、活発に行われている。でも何だろう、ずっと感じていたこのモヤモヤは…。  まるで教育さえちゃんとやれば、子どもは貧困にならないかのよう。きちんと食事を作れない親は、まるでダメな親みたい。お金をかけた教育を受けさせることのできない親や、安全な手づくりの食事をつくってやれない親は、自己責任を内在化し、ますます疲弊していく。親、特に母親だけに個人的ながんばりを強いるかのような貧困対策はぜったいにおかしい。  阿部彩さん、湯澤直美さんなど、子どもの貧困最前線からの真摯な提言は、子どもの貧困対策に欠けていたジェンダーの視点に焦点を当て、社会の仕組みそのものを問いなおす必要を説く。特に子育て支援に関わる人こそ、家族規範の強化に加担していないか、省みながら読んでほしい。(順)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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