WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

  • HOME
  • >
  • ふぇみんの書評

ふぇみんの書評

特高と國體の下で 離散、特高警察、そして内戦

孫栄健 著

    特高と國體の下で 離散、特高警察、そして内戦
  • 孫栄健 著
  • 言視舎2200円
  在日3世の著者は、1世の知人から調査を頼まれる。意外に早く記録は見つかる。それは20歳前後の青年たちの関西での戦時下の朝鮮独立運動と弾圧の歴史だった。  日本の植民地政策により貧困にあえぐ朝鮮半島南部から、1918年に両親とともに7歳で日本にやってきたその知人は、15歳から堺市の朝鮮人労働者集住地区のガラス工場で働きながら、朝鮮人労働組合で民族独立を求める学習会に参加するようになる。1936年、特高につかまり獄中で拷問の日々を2年半送る。拷問こそが日本を裏側から支え、天皇制国家の本質だったと著者は書く。その根拠となった治安維持法は、目的遂行罪であり「國體の変革と私有財産、天皇制の否認」を考えただけで犯罪となる思想犯弾圧法だった。  若き朝鮮人労働者の故郷からの離散と朝鮮戦争の動乱までを、体験と記録を引用しながら詳細に描くノンフィクション。「個人を語ることが時代を語ることになる世代」の物語に耳を傾けたい。(ね)

発達障害の薬物療法を考える

嶋田和子 著

  • 発達障害の薬物療法を考える
  • 嶋田和子 著
  • 彩流社1900円
前作『精神医療につながれる子どもたち』で、安易な診断で“薬漬け”にされる子どもたちの薬害を告発した著者。本書は、子どもの約1割が患うと言われる発達障害の薬物療法についての新告発だ。  発達障害児の数は急増しているが、まず著者は診断のあいまいさを指摘。診断項目があるが医師の持つ印象に左右される。学校で多忙な教員たちが、ある児童が「手がかかる」と受診を勧め、発達障害と診断されると即、薬物療法。親も子どものためにと従う。しかし海外の研究等が明らかにするのは、特にADHDに対する中枢神経刺激薬(効能は麻薬と同じ)の副作用の多さと長期的治療効果がないこと。ところが日本ではそれを知らされず、副作用や2次障害を抑えるために多剤が併用される…。  学校現場の病理、専門家盲信…発達障害児者を“病気”にするのは社会の歪みか。だからこそ人的支援と医療リテラシーの必要性を痛感。食事療法など、治癒への新たな視点も興味深い。(登)

環境破壊と現代奴隷制 血塗られた大地に隠された真実

大和田英子 訳/凱風社2300円

  • 環境破壊と現代奴隷制 血塗られた大地に隠された真実
  • ケビン・ベイルズ 著
  • 大和田英子 訳/凱風社2300円
みんなの好物のエビ、携帯やパソコンに必須なレアメタルや、カカオ・木材・レンガなどの採取・生産現場で、これまで以上に深刻な環境破壊が進み、現場の労働者はまるで奴隷状態だという。  著者は長年「現代奴隷制」を研究。世界中でフィールドワークを行い、地球規模のこの現実を突きつける。現代奴隷制とは、労働者が奴隷状態で働いている自己認識なく、騙されて搾取され、抜け出せないのだという。「ブラック労働」だと一応訴えることができるのは先進国だが、例示される途上国では、訴えた労働者が逆に、国・行政・警察から危害を加えられ、支援する人権・環境活動家も命を狙われる。  状況を変える可能性はあるのか。ひとつは教育。人権を脅かす犯罪に対抗するノウハウを身につける。そして消費者もモノを買うときにはちょっと立ち止まり、生産者にモノや材料の出所を確認してみようと呼びかける。環境破壊も人権破壊も止められるという信念を持って。(三)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
このページのTOPへ