WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

  • HOME
  • >
  • ふぇみんの書評

ふぇみんの書評

拉致と日本人

蓮池透 辛淑玉 著

  • 拉致と日本人
  • 蓮池透 辛淑玉 著
  • 岩波書店1700円
 2002年9月、北朝鮮政府による日本人拉致が明るみになり、1人は「シメシメ(拉致問題はこれで前に進める)」と思い、1人は「これで(在日朝鮮人は)日本人に殺される」と思った…。「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」の元事務局長の蓮池透さんと、在日3世の辛淑玉さん。交わりそうになかった2人の刺激的な対談だ。  2人の共通の意識は、拉致事件を利用して、安倍晋三をはじめとする右派政治家がのし上がったことと、凄まじい差別が生まれ、日本社会が変容したことだ。  北朝鮮との関係を 悪化させるばかりで、拉致問題の解決に取り組まない政治の不作為を、蓮池さんは厳しく批判し、辛さんは差別と闘い、抗議の声を上げてきた。安倍政権によってますます民主主義がないがしろにされ、ヘイトが跋扈するようになった日本。2人は、権力者が問題を起こしても責任をとらない社会に憤る。尤もだ。この危機的な状況に我々も怒り続けるしかない。(ゆ)

キジムナーkids

上原正三 著

  • キジムナーkids
  • 上原正三 著
  • 現代書館1700円
著者は沖縄で生まれ、1960年代から「ウルトラマン」等の脚本家として活躍。戦争や沖縄への差別を込めたシリーズも書いたことで知られる著者が、自らの戦中と敗戦直後の子ども時代を記した自伝的小説。キジムナーとは、沖縄で大きなガジュマルの木に棲む妖怪で、子どもたちの憧れだ。  母やきょうだいとの熊本への疎開、敗戦直前にサイパンから乗った帰国船での飢餓、迫り来る米軍に追われた家族の「自決」、戦後の収容所体験や個性的な悪ガキたちとの出会い、米軍から盗んだ「戦果」を隠すためガジュマルの樹間に作った秘密基地、遺骨を拾ってはガマに集める隠者のような人物との出会い…。自身や友人の体験が、子どもの視点で描かれる。ウチナーグチ(沖縄言葉)も満載で、成長期の冒険譚のようだ。  戦後は全てを無くした人々に共通の連帯感と平等意識があった、と著者は書く。戦争体験と深い心の傷とが、著者の作品の世界に反映されているのだろう。(三)

母子世帯の居住貧困

葛西リサ 著

  • 母子世帯の居住貧困
  • 葛西リサ 著
  • 日本経済評論社2900円
母子世帯の住宅事情を20年にわたり詳細に調査し、社会的課題をあぶり出した書。  シングルマザーにとってまず立ちはだかるのが住宅問題だ。一人親女性の多くが離婚を経験し、婚姻時の住居を出るが、親の家が安心して暮らせる場とは限らない。母子生活支援施設の利用率は低く、公的住宅支援も十分に機能しているとは言い難い。民間賃貸住宅は家賃の割に居住水準が著しく低い。さらに子育てに必要なサービスや地域でのつながりも重要だ。希望に適う住まいを見つけるのは本当に難しい。  こうしたニーズに対応した例として、近年はシェアハウスの認知度が上がっている。しかし母子世帯の住宅供給を市場にのみ委ねるのはリスクも大きい。やはり何らかの公的支援は必要となるだろう。そのほか、空き家活用や地方移住支援等、課題はあるが柔軟な選択肢も出始めている。安心安全の住まいをどう供給するか。今後の取り組みを考える上でも貴重な一冊だ。(梅)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
このページのTOPへ