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ふぇみんの書評

正社員消滅

竹信三恵子 著

  • 正社員消滅
  • 竹信三恵子 著
  • 朝日新聞出版760円
 正社員は待遇がよく安定した働き方という認識は変わりつつあるようだ。やっとの思いで就いた職場では、「正社員なら責任を持て」と限りなく働かされる。最低賃金すれすれの待遇、過労死寸前の長時間労働、そして「わがままを言ってはいけない」と、理不尽な状況に異を唱えることすら禁じられていく。正社員は、内面まで正社員であることを求められるのだ。  一方、すでに正社員が消滅しかけている職場もある。効率重視の大手スーパーや物流、公務現場等では責任ある仕事も非正規労働者に押しつけられる。  本来は、非正規雇用に均等待遇を求めるべきなのに、最低レベルの待遇に限りなく近づけることでコストを下げようとする力ばかりが働いている  著者は、身を守る手段として、NPOやユニオンなど自分の法律顧問を持つことや、辞めない権利と辞める権利を生かすこと、働き手のネットワークづくりなどを勧める。生き延びるための地図として、まずは読んでほしい。(梅)

「病の経験」を聞き取る[新版]ハンセン病者のライフヒストリー

蘭由岐子 著

  • 「病の経験」を聞き取る[新版]ハンセン病者のライフヒストリー
  • 蘭由岐子 著
  • 生活書院1800円
療養所入所時に慣習だからと言われて名前を変え、存在そのものを社会や家族から切り離されたまま生涯を終えた人々。患者間の結婚は断種を前提とするという非人間的な扱いや、母親の死を兄弟からも知らせてもらえないなど、ハンセン病患者の苦悩や偏見の歴史は私たちが忘れてはならないことばかりだ。  本書は、健康と病の社会学を研究している著者がまとめ、かつて話題を呼んだ名著の文庫版。500ページを超す厚さの中には、著者自らの取材の心構えや葛藤なども書かれている。また明治以来の国威発揚や先進国であることを証明するために患者を強制収容した史実、戦後に薬が開発され「可治の病」になったにも関わらず、1996年に「らい予防法」が廃止されるまで患者たちを苦しめた隔離主義などの記述には、この国が抱える深い闇を見る思いがする。一方、患者らの戦後の闘いによって制度を変え、自由と尊厳を取り戻した歴史も学ぶことができる。(室) 

済州島で暮らせば

金蒼生 著

  • 済州島で暮らせば
  • 金蒼生 著
  • 新幹社1500円
 大阪で生まれ育った在日2世の著者は還暦前の2010年、同じ在日2世の夫と、両親たちの故郷、韓国・済州島に移住した。「母語は日本語、感性は日本語で育まれた」が、「生まれた地を選べなかったから、済州島で生き直したい」との決意で渡った島での約6年半の暮らしを綴る。  交通や買い物が不便な村で畑を耕しながら、島の行事や催しに出かける。美しい自然が広がる済州島だが、多くの島民が虐殺され、長い間封印されていた「四・三事件」の悲しい歴史を忘れないようにと今は毎年慰霊祭が行われ、慰霊碑などが各地にたつ。著者はこの悲劇を日々感じながら、日本のヘイトスピーチや日本軍「慰安婦」問題と向き合い発言し、済州島海軍基地反対運動にも参加する。  夫をがんで亡くした後も、悲しみを乗り越え、2つの国を見つめながら島民として生きる著者が清々しい。書物や韓国映画・ドラマの話も豊富で、人生を楽しむエッセンスがたっぷり!(う)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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