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ふぇみんの書評

13歳、「私」をなくした私 性暴力と生きることのリアル

山本潤 著

  • 13歳、「私」をなくした私 性暴力と生きることのリアル
  • 山本潤 著
  • 朝日新聞出版1400円
著者は13歳から7年間、実父による性虐待を受けた。衝動や鬱屈・混乱などの紆余曲折を経て、現在は自身の経験を積極的に社会に発信し、被害者の視点から社会を変えようと活動している。  父と別れた母に被害を伝えた後の母の苦悩。自分の被害が何であるかを知ろうと学び抜き、看護師になり、性暴力被害者支援の活動仲間に被害をカムアウトするまでの心の動き。パートナーと信頼を築く過程。酒やセックスへの依存からいかに抜けることができたのか。家族や親友に支えられ、もうこれまでの生き方はまっぴらだと回復するまでの姿に、心が揺さぶられ続けた。  いままさに国会で審議が待たれる刑法性犯罪規定の改正に向け、著者は行動を続けている。改正を待ち望む被害者として、法制審議会などでの委員たちの無理解に時に絶望しかけ、しかしそれでも自分が伝えていかなければという姿勢に圧倒される。性被害に遭った人が望む社会は、誰もが生きやすい社会だと確信した。(三)

江戸の乳と子ども いのちをつなぐ

沢山美果子 著

  • 江戸の乳と子ども いのちをつなぐ
  • 沢山美果子 著
  • 吉川弘文館1700円
「母乳」ではなく「乳」である点がミソ。江戸時代の産婦の乳をめぐるユニークな研究書だ。  江戸時代は、出産した女性や乳児の死亡が多く、いのちをつなぐことが厳しい時代だった。ミルクのような有効な乳の代替物がない時代は、乳が乳児の命綱。産婦が死亡したり、乳の出が悪ければ、農民たちは村落共同体のネットワークの中で貰い乳をし、町人は乳母を雇い、上層の武士は里子に出したりしていた。乳が売買される状況が生じると、自らの乳を糧に“乳持ち奉公”に出る貧しい女性が出現。捨て子や子殺しなど自分が産んだ子どもを犠牲にするほか、さまざまな矛盾・問題も生み出 されていたという。  著者は、こうした階層差や、授乳期間と出産コントロールの関係も分析し、近代に入り「母性イデオロギー」「母乳の価値」が強調されていく過程も解説している。江戸時代の女性・子どもの状況や身体観が興味深く、既存の価値観を問い直す視点を示唆する書だ。(う)

反核の闘士ヴァヌヌと私のイスラエル体験記

ガリコ美恵子 著

  • 反核の闘士ヴァヌヌと私のイスラエル体験記
  • ガリコ美恵子 著
  • 論創社1800円
著者は1990年、京都で出会ったイスラエル人と結婚し、翌年、8カ月の娘を連れてイスラエルに移住する。著者が見たイスラエルの有り様は、税金の多くがセキュリティに費やされ、大人の半数が予備役(兵士)で、隣人のパレスチナ人を知ることなく、宗教と民族による差別にあふれた国だった。この国はなにかおかしいと思い続けた著者は、「偏見と洗脳」に自分が侵されていたと気づき、平和運動にかかわるようになる。  著者はあるパーティーで、イスラエルの核開発計画を暴露した罪で囚われ、18年ぶりに釈放されたモルデハイ・ヴァヌヌと知りあう。釈放後もヴァヌヌは「自由」を制限され、ささいなことで起訴されるが、イスラエル国家との闘いを続ける。やがてヴァヌヌは、著者にとって“頼れる師”であり、“気心の知れた友”となる。今後も核廃絶のために闘う友としてあり続けるのだろう。  一人の日本人女性の視点から日常のイスラエルを知る好著。(ね)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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