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ふぇみんの書評

フェミ私史ノート 歴史をみなおす視線

秋山洋子 著

  • フェミ私史ノート 歴史をみなおす視線
  • 秋山洋子 著
  • インパクト出版会2800円
 中国女性史研究者で『リブ私史ノート』の秋山洋子さんの遺著。昨年8月に亡くなるまで校正を重ねたという。  読み進めるほどに、リブと“今”とをつなぎたい著者の熱意が伝わり、強く刺激された。戦争中に中国・大連で暮らした日本人主婦の生活や、「銃後」への視線。長く関わった中国論では、日本の支配を問い、現在との接点を語る。中国女性作家や中国の女性運動への共感。中国革命と恋愛論を分析する「『赤い恋』の衝撃」。男性作家の描く戦時性暴力への批判。山西省の「慰安婦」研究『黄土の村の性暴力』評、映画『纏足』評など、著者の経験に裏打ちされた言葉が続く。著名男性作家の、妻の労働“搾取”と、そんな妻が夫と別れ作家として自立して書いた作品を読む「対幻想のかげで」、サラ・パレツキー論など、フェミニストたる著者の視線に心が弾み、一気読みした。  著者が語った未読の作品に、これから出会いたい。ありがとう、秋山さん。(三)

満州 集団自決

新海均 著

  • 満州 集団自決
  • 新海均 著
  • 河出書房新社1900円
 1945年9月に起きた、満州瑞穂開拓団村民495人の集団自決。開拓団の中で自決死亡者が一番多い瑞穂を中心に開拓民の苦難をていねいな取材から描いている。  国策によって全国から集められた人々による瑞穂開拓団は、満州開拓史上最も経済的に繁栄した村だった。が、ソ連の対日参戦と関東軍の逃亡により“棄民”となった村民は、度々の暴徒の襲撃に追い詰められ、村民会議は自決を促す決定をする。戦闘に巻き込まれたわけではないのに集団自決が起きたことは注目すべきだ。胸をえぐられるような悲劇は瑞穂村だけではない。逃避行の間に自決、殺害、病、飢餓で多くの命が失われた。ソ連兵による性暴力に遭った女性もいる。残留邦人、生活困難の生還者に、日本政府は冷淡だった。  開拓団は現地の人から土地や住居を奪うことで誕生した。排除された側が暴徒となったり、棄民を助けたりしたことを重く受け止めたい。民の命を軽視する為政者に怒りがこみ上げてくる。(ぱ)

心に刻み 石に刻む 在日コリアンと私

飛田雄一 著

  • 心に刻み 石に刻む 在日コリアンと私
  • 飛田雄一 著
  • 三一書房1800円
  兵庫県神戸市には戦前から朝鮮人が多く暮らしている。戦争中には神戸港での造船や重工業の現場を中心に朝鮮人、中国人、連合国捕虜などが大勢、強制労働させられた。戦後間もない1948年にはGHQと日本政府の朝鮮学校閉鎖命令に抵抗する阪神教育闘争が起こり、1961年には武庫川河川敷に居住していた約2000人の在日朝鮮人が強制立ち退きをさせられる事件もあった。  著者は1970年代初めから在日朝鮮人問題と取り組み、現在「神戸学生青年センター」の館長。戦後にわたる歴史的事実をひもとき、記録し、命を落とした人びとのために碑を建てるなどの活動とともに、在留資格等の法的地位の問題点を改善すべく、当事者と一緒に歩み続けている。本書はそのような活動を記した文章のまとめ。  昨今のヘイトスピーチからは、なぜ在日朝鮮人が日本に住んでいるのかすら知らない日本人自身の問題が浮かび上がる。知っておくべきことが満載の一冊だ。(室)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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