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ふぇみんの書評

THIS IS JAPAN 英国保育士が見た日本

ブレイディみかこ 著

  • THIS IS JAPAN 英国保育士が見た日本
  • ブレイディみかこ 著
  • 太田出版1500円
 在英20年の保育士にして、新自由主義と緊縮財政によって格差と貧困にあえぐ欧州の様子を伝えてきた著者が、日本の貧困の現場に切り込んだルポ。キャバクラユニオンの交渉、富の再配分を求める若者たち、保育の現場、ドヤ街…。  著者がまず驚いたのが多くの日本人が「一億総中流」を信じていること、貧者と富者が「襖を閉めて同居している」こと(お互い姿は見えない)。だから本当の意味での「労働者」という政治勢力が形成されない。しかも最大の問題として著者が指摘するのが、貧困問題が人権課題となっていないことと日本人に人権意識が根付いていないこと。「権利は義務とセット」との考えが強いから、貧困者は全ての力を奪われる。社会運動の中にも、貧困を解決する経済政策が立ち上がっていないと。  欧州では、格差と貧困を解決する経済政策を唱える左派が席巻している。日本はどうか?著者の見た光とは?ぜひ確かめてほしい。(登)

ヒトラーの娘たち ホロコーストに加担したドイツ女性

ブレイディみかこ 著

  • ヒトラーの娘たち ホロコーストに加担したドイツ女性
  • ウェンディ・ロワー 著 武井彩佳 監訳 石川ミカ 訳
  • 明石書店 3200円
ナチス時代を生きた女性たちはいかにホロコーストを目撃し、間接的あるいは直接的な加害者としてそこに関与したのか。この問いに対し、近年とりわけジェンダー史の分野での研究が進められている。本書は、直接的な加害者として戦後すぐにもセンセーショナルに注目された強制収容所の女性看守や、指導的立場にあったごく一部の女性ではなく、これまで従属的・補助的役割と見なされてきた地位にあった女性たちにスポットを当てた点で際立っている。  前線兵士のケアを担った看護師、事務作業に従事したタイピストや秘書、過酷な任務に疲れた男性たちを癒やす役割を期待された恋人や妻としての女性たちが、実際にはいかに過激な暴力を行使していたか。また、戦後はこうした女性たちが「女性は非暴力的である」というジェンダー観を隠れ蓑に、いかにその犯罪性を逃れたか。膨大な証言や私的な手紙などの緻密な分析を通して、もはや克服しえない深い禍根の痕跡に迫る。(ゑ)

近代日本公娼制の政治過程 「新しい男」をめぐる攻防・佐々城豊寿・岸田俊子・山川菊栄

関口すみ子 著

  • 近代日本公娼制の政治過程 「新しい男」をめぐる攻防
  • 関口すみ子 著
  • 発行 白澤社 発売 現代書館2400円
近代日本の公娼制度と、その背景となる政治過程を、3人の女性たちの功績から明らかにする書。  婦人矯風会で書記を務め、公娼全廃を訴えた佐々城豊寿の論調には、娼妓への蔑視があると批判もされたが、主張の根拠には人権尊重があり、女性の社会進出、言論の自由や財産権も提起している。岸田俊子も、廃娼と女性の教育の必要性を訴えた一人である。  1930年代には公娼制廃止が実現するように思われたが、「慰安所」が軍の戦略に組み込まれると、再び論外となる。  山川菊栄は、当事者の立場から、公娼制廃止のほか機会均等や性別・民族を問わない標準生活賃金等を掲げた。  3人に共通するのは国家的弾圧や、誹謗中傷被害だ。だが菊栄の戦後の活躍からもわかるとおり、その声は再び取り戻される。廃娼運動は、性と戦争を巡る国家の構造との闘いでもあった。今後の考察にも期待したい。(梅)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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