WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

  • HOME
  • >
  • ふぇみんの書評

ふぇみんの書評

韓国人元BC級戦犯の訴え 何のために、誰のために

李鶴来 著

  • 韓国人元BC級戦犯の訴え 何のために、誰のために
  • 李鶴来 著
  • 梨の木舎1700円
 1925年、日本統治下の朝鮮半島に生まれた、李鶴来(イ・ハンネ)さん。アジア太平洋戦争中に捕虜監視員となって、映画『戦場にかける橋』でも知られるタイの泰緬鉄道建設現場で働かされた。日本の敗戦後、連合軍によって捕虜虐待の罪で死刑判決が下される。処刑される同胞を見送ったつらい経験もある。減刑になり東京の巣鴨プリズンに送られ、計11年の刑を終え、釈放された時には、もう日本は戦争を忘れていた…。  日本人BC級戦犯として裁かれながら、1952年のサンフランシスコ平和条約によって日本国籍を失ったため、戦後補償も援護もほとんど受けられなくなった理不尽さ。60年間、29人の歴代首相に宛てた李さんたちの謝罪と補償を求める訴えに、だれも耳を傾けない。  本書は戦中~戦後を生きぬいてきた李さんを通して、戦争の重要な一面を浮かび上がらせ、いまも続く李さんたちと亡くなった元戦犯たちの、尊厳をかけた闘いの大切な記録になっている。(室)

沖縄への短い帰還

池澤夏樹 著

  • 沖縄への短い帰還
  • 池澤夏樹 著
  • ボーダーインク2400円
  本書は、1994年から10年間沖縄に住んだ著者の、沖縄に関する書評やエッセー、講演録、そして米軍に対する声明をも含めた多種な文章を、旧知の那覇の編集者が10年を経た今、まとめたもの。  著者は「帰りそびれた観光客」「永遠の旅行者」と客観的に名乗るが、旺盛な知識欲から深く沖縄に関わっていく。  94年とは大田昌秀知事時代。翌年、米兵による少女強姦事件が起き、知事は軍用地の強制使用の代理署名を拒否するなど沖縄の世論が激しく動いた。著者は、沖縄人から「沖縄のことは池澤さんに聞け」と評されるほど芸能、文学、政治、基地問題に「入れあげた」。久高島の風葬墓を撮影した芸術家・岡本太郎の写真集には、「沖縄文化をヤマトに紹介するのはあくまでヤマトのため」と、異文化への向き合い方を厳しく糺し、文化も「収奪」の対象であると示す。  辺野古建設の今の局面を踏まえ、沖縄の次の10年を見据える著者の目が、温かく鋭く光る。(三)

ゆらぐ親密圏とフェミニズム

海妻径子 著

  • ゆらぐ親密圏とフェミニズム
  • 海妻径子 著
  • コモンズ1800円
「グローバル時代のケア・労働・アイデンティティ」がサブテーマ。本書では、子育てや仕事、介護等、日常のさまざまな出来事が、フェミニズムの視点から考察される。  著者は非正規の大学教員として複数の職場を掛け持ちし、子育てと老親のケアも抱えた。2011年には職場と父親の自宅のある岩手で東日本大震災を経験している。  「親密圏」とは、その人への生命、時にその不安や困難に対する関心や配慮を、ある程度持続的な関係性の中で持ち続けている相手との間の、空間と時間の分かちあいのことと、著者は定義する。  行政をはじめとする支援の中では、安否確認、状況把握として個人情報が渡る。これまでの「家族」や「親密圏」が拡散されてしまう。「ケアの社会化」の中では、それは致し方ないことなのか。しかし女性や子ども、高齢者等の弱者の自己決定は揺らぐ危険性を常にはらむ。フェミニズムはこれにどう折り合いをつけるのか。今後の考察に期待をしたい。(梅)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
このページのTOPへ