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ふぇみんの書評

介護漂流 認知症事故と支えきれない家族

山口道宏 編著

  • 介護漂流 認知症事故と支えきれない家族
  • 山口道宏 編著
  • 現代書館1600円
年を取ることは罪なのか、そんな嘆きが聞こえる。冒頭では名古屋認知症鉄道事故で、家族の監督義務は絶対ではないとしてJR東海が逆転敗訴となった事件に触れ、在宅介護の現状、現在の介護保険制度の限界点や問題を考える。  国が推進する「施設から在宅へ」の流れには、住み慣れた地で最期までという考えがある一方、「介護の社会化」の後退の面も否めない。「介護離職ゼロ」のかけ声も虚しく、担い手不足も深刻だ。介護は「主婦がタダでするもの」という意識はいまだ払拭されず、専門性の評価も、賃金水準底上げの議論も十分にされないまま外国人労働に取って代わろうとしている。介護漂流、孤立死、虐待死を防ぐためには何が必要か。著者は、「介護の社会化」の理念を貫き通すことと、世代間連帯だという。  「閉じこもらない」ために、家族会や身近な専門家の支援体制づくりは必須だ。支えが必要な誰にも手を差し伸べる社会の構築が必要という言葉にうなずいた。(梅)

京城のモダンガール 消費・労働・女性から見た植民地近代

徐智瑛 著 姜信子、高橋梓 訳

  • 京城のモダンガール 消費・労働・女性から見た植民地近代
  • 徐智瑛 著 姜信子、高橋梓 訳
  • みすず書房4600円
  植民地朝鮮時代を描いた韓国の映画やドラマにもよく登場する、京城(現・ソウル)の街を闊歩していた「モダンガール」と呼ばれた女性たち。本書は朝鮮のモダンガールを、階級やジェンダー、植民地都市の視角を通して捉え直した画期的な研究書だ。  日本による植民地支配と近代化のはざまで登場した朝鮮のモダンガールは、日本の大正時代のモダンガールを母胎とはしていても差異があり、ショップガールやバスガールの新職業婦人、女学生、女給、女工、妓生(キーセン)など、さまざまな階層からなっていた。働き口を求め家を出て都市に(日本にも)行き、商品の消費、自由恋愛など新しい生き方を経験すると同時に、知識人男性からの非難、都市男性から欲望される「商品」となる危うさ、植民地女性としての構造的な脆弱さがあったことがよくわかる。彼女たちの主体性、性や帝国の欲望の背景など、モダンガールから浮き上がる近代史から見えるものが多々ありそうだ。(り)

社会をちょっと変えてみた ふつうの人が政治を動かした七つの物語

駒崎弘樹、秋山訓子 著

  • 社会をちょっと変えてみた ふつうの人が政治を動かした七つの物語
  • 駒崎弘樹、秋山訓子 著
  • 岩波書店1800円
「世界は意外に、フツーに変えられる」。社会が変わらない!と嘆く「運動疲れ」の私たちにピッタリの本書は「フツーの人」が「フツーに世の中を変えていった」事例を紹介するとともに、社会を変えちゃうノウハウが満載だ。  事例は、著者の1人でもある、病児保育フローレンス代表の駒崎弘樹さん、「保育園増やし隊@杉並」の曽山恵理子さん、「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」代表の明智カイトさん、NPO法成立に尽力した松原明さんなど7人。社会への効果的なアピールの仕方、議員や官僚をどう味方にするか、問題と「関係ない人たち」とどう対話するのか-。ある議員が言った「市民運動の人がピュアすぎる。政治的妥協をしない」との言葉もチクっと刺さる。  ロビイングの方法も細部まで実践的。マーケティング手法や究極のコミュニケーション力が必要だが、「自分もやれる!」と思える。ジェンダー視点がもう少しあれば言うことなし。(登)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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