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ふぇみんの書評

戦後の地層 もう戦争はないと思っていました

東京新聞「戦後の地層」取材班 著

  • 戦後の地層 もう戦争はないと思っていました
  • 東京新聞「戦後の地層」取材班 著
  • 現代思潮新社1800円
戦後70年の昨年、多くのメディアで「戦争」や「平和」の特集が組まれた。その中で東京新聞の記者たちが自身の記憶や体験も踏まえ、「戦前から積み重なった戦後という『地層』の探索」をした連載に加筆してまとめたのが本書。  日々の小さな場面にもあった小さな戦争の影。たとえば、「桜と戦争は相性がいい」。ぱっと散る桜には死の美学が宿り、戦争に利用されていたという。毎年桜を心待ちにする身としては、何か見透かされた気持ちになる。「あれ以来、桜と目を合わせたことがない」という元特攻隊員の証言にハッとした。  体育で水を飲むことを制限された経験のある人もいるだろう。それも戦争体験に犯された精神主義のスポーツ指導だという。そして「勝てば官軍」などという戦争引用用語に、知らず知らずに毒されていないか。  メディアの劣化が取りざたされる昨今だが、「新聞の役割は、日本に二度と戦争をさせないこと」という気概が満ちている。(三)

フランスを目覚めさせた女性たち

J=L・ドブレほか 著 西尾治子ほか 訳

  • フランスを目覚めさせた女性たち
  • J=L・ドブレほか 著 西尾治子ほか 訳
  • ウィメンズ・オフィス3400円
 オランプ・ド・グージュ、ジョルジュ・サンドにマリー・キュリーといった有名人をはじめ、政治家、革命運動家、医師、弁護士、起業家、作家やジャーナリストとして女性の権利と自由を切り拓いてきた女性たちの人生が、伝記的に描き出される。ユダヤやムスリムの背景を持った女性たちの事例も交え、フランス社会の多層性にも着目している点が印象的だ。  原著は人物の思想に分析や考察をほとんど加えていないため、人物の交友関係や人生経験、主張の一端を一瞥するのに適しているだろう。フランス風のウィットに満ちた筆致を訳出する苦労も推し量られるが、訳語の統一不足や生硬さが散見されることが口惜しい。  なぜ今また、女性史なのか?と疑問に思う読者も多いかもしれない。しかし、男性の領域とされてきた職業を自ら選んだ女性たちが直面した不平等や困難に、強い信念をもって闘ってきた先人たちの記録は、私たちに大きな勇気を与えてくれるだろう。(ゑ)

福島が日本を超える日

浜矩子、白井聡、藻谷浩介、大友良英、内田樹 著

  • 福島が日本を超える日
  • 浜矩子、白井聡、藻谷浩介、大友良英、内田樹 著
  • かもがわ出版1500円
 「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟の裁判期日に、裁判所に入りきれなかった何百人もの原告たちのために裁判所近くで開かれた講演会の記録。  曰く、「アホノミクスで富国を実現、憲法改正で軍事同盟を強化して、大日本帝国を取り戻すことが、『日本を取り戻す』の実態」(浜)、「原発をなくすことは、永続敗戦レジーム(敗戦の否認=侮辱の体制)を倒すこと。沖縄の闘いも同じ」(白井)、「未来を見通して山野の恵みを使って楽しく生きる生き方(里山資本主義)を今から工夫してほしい」(藻谷)、「自民党はすでに保守ではなく『過激派』、公明党は追随勢力」(内田)。  「生業を取り戻す」訴訟への深い共感とともに語られる言葉は、平明だがエッセンスが詰まっている。論に疲れたら、福島で思春期を過ごし、「あまちゃん」の主題歌を作曲した大友良英さんの「久慈の人々が『あまちゃん』で誇りを取り戻した」話を泣き笑いしながら読んでほしい。(ね)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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