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ふぇみんの書評

沖縄戦場の記憶と「慰安所」

洪 ユン伸 著

  • 沖縄戦場の記憶と「慰安所」
  • 洪 ユン伸 著
  • インパクト出版会3000円
太平洋戦争時、沖縄・大東・先島諸島に日本軍が設置した「慰安所」は130カ所に上る。本書は「陣中日誌」や市町村史の膨大な資料や、聞き書きなどから各地域の「慰安所」を分析し、「慰安婦」本人ではなく、住民が語る「慰安所」の記憶に焦点をあて、「慰安所」が沖縄内部にどのような変化をもたらしたのかを探っている。  「沖縄人」「日本人」「朝鮮人」「米軍」が混在し、住民が「スパイ視」された沖縄の戦場。「慰安所」の存在が、中国戦線での日本軍の蛮行を想起させ、米軍に同じことをされるのではないかという「恐怖」へと転換し、米軍に降伏することを防止する統治手段として利用されたと指摘。一方、宮古島での「慰安婦」と住民との交流の例も挙げ、単純な加害と被害の図式ではなく、加害と被害が交差する背景をていねいに考察する。空間や関係性から「慰安所」を分析した気鋭の研究書は、「慰安婦」や沖縄の基地問題を考える上で、重要な視座を与えてくれる。(ぱ)

サハリン残留 日韓ロ 百年にわたる家族の物語

玄武岩、パイチャゼ・スヴェトラナ 著 後藤悠樹 写真

  • サハリン残留 日韓ロ 百年にわたる家族の物語
  • 玄武岩、パイチャゼ・スヴェトラナ 著 後藤悠樹 写真
  • 高文研2000円
 日露戦争後に日本領となり樺太と呼ばれた地に居た日本人は、敗戦を機に引き揚げ船で帰国した。だが、引き揚げ船に乗れたのは日本人だけで、朝鮮人は乗れなかった。「サハリン残留者」とは、朝鮮人の養父母や夫を残していけなかった日本人女性(とその子ども)であり、帰国の道を閉ざされた朝鮮の人々だった。  本書には国家に翻弄されつつ生きた10の家族の話が収められている。  日本統治時代に朝鮮半島からサハリンへと強制連行された父と追ってきた母との間に生まれた金(キム)・ヨンジャは、「創氏改名」制度下で金川(かねかわ)よし子と名付けられた。戦後のソ連編入後、工場労働の場で名乗った名はレーナだ。2000年代に母・姉・夫も韓国に永住帰国したが、レーナは娘マリーナとサハリン永住を選択する。  添えられた写真、巻末のサハリンの特異な歴史や日韓帰還事業の記述からは、著者らの本書に込めた熱い思いが伝わる。(束)

生姜(センガン)

千雲寧 著 橋本智保 訳

  • 生姜(センガン)
  • 千雲寧 著 橋本智保 訳
  • 新幹社2000円
 1980年代の韓国では、軍事独裁政権が民主化闘争を武力で制圧し、学生らを次々と逮捕しては拷問した。ソウルを舞台に、拷問技術者の安(アン)とその娘・ソニの11年を描いた小説。87年の民主化闘争の勝利後、安は追われる身となり、自宅屋根裏に11年潜伏後に自首する。安は実在の人物がモデル。そこに架空の娘を設定して物語を紡いだのは、71年生まれの韓国女性作家だ。  「アカ」狩りという正義に邁進した父と、頼りがいのある父と信じていたソニ。ソニは父の正体を知り、屋根裏の「化け物」を拒絶する。が、ある日父のしたことを詳らかにし、罪を突きつけることを決意する-。本書の柱の1つは家父長制打倒か? 安は自分の上司を「父」と仰ぎ拷問を極め、ソニは自らに巣くう家父長制に立ち向かう。  安とソニが交互に語る短文の連なりは2人の息遣いのよう。肉感的な表現は読み手の五感を呼び覚ます。70年代生まれの自由さと大胆さ、覚悟も感じた。(登)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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