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ふぇみんの書評

戦争を悼む人びと

シャーウィン裕子 著

  • 戦争を悼む人びと
  • シャーウィン裕子 著
  • 高文研2000円
 本書は日本の「加害」の記録である。前半は、元兵士たちにインタビューし、彼らの記憶にある加害行為の証言を、後半は、加害の記憶を受け継ぎ、後世に記録を遺そうと尽力している人たちに取材したルポを収めている。  激戦地での生々しい加害証言はこちらも胸をえぐられるように苦しい。が、日本は世界で何をしてきたのか、私たちは知るべきだ。彼らの勇気ある証言の裏には、若者の命を使い捨てにし、下級兵士が戦犯となっても多くの高級軍人は罪に問われなかったばかりか、再軍備を進めようとしているこの国への怒りがあるのではないか。  海外生活が長く、英国の日本軍元捕虜についての本も書いている著者は、ドイツと日本の戦後処理の仕方を比較し、今の時代は「謝罪の政治」が国際的に期待されていることを紹介している。歴史修正主義者が跋扈する現政権は、侵略戦争・戦争犯罪を直視してこなかった日本の姿勢が生んだものだと肝に銘じたい。(ぱ)

〈68年〉の性 変容する社会と「わたし」の身体

神奈川大学人文学研究所 編 小松原由理 編著

  • 〈68年〉の性 変容する社会と「わたし」の身体
  • 神奈川大学人文学研究所 編 小松原由理 編著
  • 青弓社3400円
  西側諸国を中心に、権威主義への抵抗と反戦、資本主義システムからの人間解放などをめぐって、さまざまな理想と実践が育まれた〈1968年〉という時代の画期。しかしその時代は、性に関しては旧態依然とした抑圧構造を残していた。いくつかの性的にラディカルな実践ですらも、性と身体に布置された権力装置を、そう簡単に崩すことはできなかった。  この時代の画期にあって、性と身体はどのように経験されたのか。また、その感覚はどのように表現されたのか。近年膨大に蓄積されつつある〈68年〉研究では周縁化されがちなこのテーマに、米国、英国、フランス、ドイツ、日本における同時代の文学、社会運動、映画や漫画などの大衆文化、現代アート作品を例にとりながら、気鋭の論者たちが切り込む。ウーマン・リブ前夜の女性たちを呪縛していた社会状況を改めて見直し、これまで議論の俎上に乗せられてこなかった、葛藤に満ちた実践の歴史を読み解く。(ゑ)

森達也・青木理の反メディア論

森達也・青木理 著

  • 森達也・青木理の反メディア論
  • 森達也・青木理 著
  • 現代書館1700円
  映画監督・森達也さんとジャーナリスト・青木理さんが対談する。オウム真理教事件、死刑、拉致問題などについての議論を通して、メディアの状況だけではなく、日本の民主主義や刑事司法のあり方が見えてくる。  オウム事件は、これを特異な犯罪にすることで、喚起された危機意識が社会を内側から変質させ、国家機能の強化を図る動きにつながっており、報道の萎縮も原点はオウム報道だという。  また、朝日新聞バッシングや現政権に批判的なキャスターなどの排除は、メディアの過剰な忖度や自主規制の現れだ。このままではメディアの萎縮はさらに進み、ジャーナリズムは衰退すると危惧する。  しかし、「マスゴミ」と一刀両断にするだけでは思考停止であり、挙げ句の果てにはデマやガセや謀略論に踊らされてしまうと青木さんは指摘し、「メディアの復権」が最後の希望だと森さんはいう。私たち市民がすべきことは何か、本書を読んで考えたい。(ね)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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