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ふぇみんの書評

韓国・独裁のための時代 朴正熙「維新」が今よみがえる

韓洪九 著/李泳釆 監訳・解説/佐相洋子 訳

  • 韓国・独裁のための時代 朴正熙「維新」が今よみがえる
  • 韓洪九 著/李泳釆 監訳・解説/佐相洋子 訳
  • 彩流社2800円
 韓国の元大統領・朴正熙は「漢江の奇跡」と呼ばれる韓国の経済発展を導いたという面と、軍事政権を打ち立て、人権や民主主義を抑圧した独裁者という両面のイメージが強い。歴史家の著者は負の側面に焦点を当て、朴正熙「維新」体制の誕生から崩壊まで、金大中拉致事件、光州事件といった歴史的事件を絡ませながら分析する。朴政権を揺るがした女性労働者の抵抗運動にも光を当てている。  日本の陸軍士官学校を卒業した朴正熙の精神的ルーツは「明治維新」であり、彼は明治維新の再現を掲げて政治に登場してきたという。この独裁者は権力維持のために、憲政を破壊し、政治的弾圧を行い、多くの人々が犠牲になった。  彼の娘である朴槿恵大統領の現政権は、歴史の国定化・成長優先主義など、父親の時代を再現しているとも言われる。民主主義が危機的状況にある日本にとって、本書は韓国現代史の理解の助けになるだけでなく、日本を映す鏡として響いてくるものがある。(ん)

日本とフィリピンを生きる子どもたち ジャパニーズ・フィリピノ・チルドレン

野口和恵 著

  • 日本とフィリピンを生きる子どもたち
  • 野口和恵 著
  • あけび書房1400円
JFC(ジャパニーズ・フィリピノ・チルドレン)として、日本そしてフィリピンで生きる子どもたちがいる。フィリピンのNGOでボランティアを経験した著者は、子どもたち、母たちから話を聞き、その生きる姿を記す。  JFCの多くは日本人を父に持つが、養育費をもらっていなかったり、消息が不明であったりしている。父親や日本への思いを抱え、日本で働くことを希望するJFCも多い。しかし、彼らを搾取しようとする悪徳業者もいる。JFCが抱える問題の背景にあるのは、さまざまな形の女性差別と、日本社会の不寛容さだ。それは重国籍を認めない日本の国籍法にも色濃く表れている。  だが、今、JFCとして誇りを持って生きる人たちがいる。被災地で自助グループをつくり活動する女性たちの活動もある。  見えづらかったJFCの姿がよくわかる一冊。ぜひ一読を。(梅)

中東の現場を歩く 激動20年の取材のディテール

川上泰徳 著

  • 中東の現場を歩く 激動20年の取材のディテール
  • 川上泰徳 著
  • 合同出版2200円
  著者は、朝日新聞記者として、1993年に米国でオスロ合意調印式に立ち会い、翌年カイロに赴任して以来、5回の駐在を含め、長く中東にかかわってきた。  本書は副題にあるように、著者が中東の現場で、どのような人をどのように取材し、どう記事にしていったのかを書いた取材記だ。  中東などの海外の事件では、新聞には「男性」「女性」とだけ書かれがちだ。だが、「日常生活を営んでいる人々に目を向け、描き、その肉声を描けば、日本の読者にも、同じ人間が戦争によって生活を押しつぶされていることが伝わるはずだ」と著者はいう。  パレスチナ、イラク、エジプト、シリアなど、いくつもの国々や事件の現場、さらに人々の生活の中で大きな意味を持つイスラム教についても詳細に描かれる。せいぜい1200字の新聞記事に入ることのない、その背景にある人々の物語に引き込まれる。今の中東をより理解するためにも、多くの人に読んでほしい。(ね)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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