WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

  • HOME
  • >
  • ふぇみんの書評

ふぇみんの書評

”ヒロシマ・ナガサキ” 被爆神話を解体する 隠蔽されてきた日米共犯関係の原点

柴田優呼 著

  • ”ヒロシマ・ナガサキ” 被爆神話を解体する
  • 柴田優呼 著
  • 作品社2400円
日本は「被爆国」として世界に発信する役割がある―。しかし本書が明らかにするのは、被爆体験の「語り」自体が、いまだ米国の戦後戦略に組み込まれ、占領期と似た状況だという衝撃の事実。  始まりは原爆投下16時間後のトルーマン声明。放射能の影響を軽視して爆発力のみを重視し、「非白人」を成敗したとして人的被害と米国の責任を隠蔽するものだった。その後、米国は国内外と占領下の日本に徹底した情報統制を行う。そんな中、今も世界で「正典」として読まれている。ジョン・ハーシーのルポ『ヒロシマ』が出るが、トルーマン声明をなぞったものだった。一方日本では米国の「2重の検閲の環」の中で、『ヒロシマ』を倣った作品(永井隆著『長崎の鐘』ほか)が広く流通する…。  なぜヒロシマ・ナガサキが人類の経験となりえないのか…。今後の行くべき道(平和主義)を照らす、刺激に満ちた本。(登)

生と死をつなぐケアとアート 分かたれた者たちの共生のために

アートミーツケア学会 編

  • 生と死をつなぐケアとアート 分かたれた者たちの共生のために
  • アートミーツケア学会 編
  • 生活書院2000円
〈葬式をしない寺〉という言葉に興味を持ち、読み進めた。大阪で開かれた寺としてケアやアートに関するワークショップを行い、老若男女が集う。その寺の住職を中心に、生きている人、死を控えた人、亡くなった人の「共生」を考える人々による対談を収めた書。住職と「臨床」哲学者、地域コミュニティーの専門家らが、生と死をテーマにする映画監督やホスピスの専門看護師、病院でアートプロジェクトを行う人たちと対談する。  病を持つ人のケアとアートのつながりは、する人/される人が互いに関わる実践として興味深い。震災で亡くなった人、無くなった家と地域を想起させるプロジェクトやホスピスの看取りケアは、むしろ生きている人のケアだと胸に響く。  「いのち」の世話=ケアは、コミュニティーづくりだという実践も紹介される。しきたりや慣習にとらわれず、女同士のつながりのように、苦悩しつつ多様で新しい仲間と空間を紡ぐ。じわじわと身体に沁みる一冊だ。(三)

経済的徴兵制

布施祐仁 著

  • 経済的徴兵制
  • 布施祐仁 著
  • 集英社760円
 米国で貧困層の若者が大学進学や医療保険のために軍に志願する「経済的徴兵制」は、堤未果さんのルポで知られる。本書では、自衛官募集の現状と歴史から日本版「経済的徴兵制」の実態と、加えて筆者が入手した「イラク復興支援活動行動史」を分析し、海外派遣を背景に精神教育や死生観教育の強化が進む自衛隊の現状も描く。  自衛隊の募集は、「ポン引き」まがいと批判された街頭募集から、自治体との協力、さらに高校や専門学校との協力へと広げてきた。少子化や安保法案の影響で募集が厳しくなる中、学校の協力による隊員獲得は重視される方向にある。昨今は卒業生の隊員を母校に派遣して募集へとつなぎ、総合的学習の一環としての宿泊体験も「種まき広告」として位置づけられるという。  国家が国民を「資源」ととらえ「消費」する最たるものは戦争であり、犠牲となるのは「一部の〈貧困〉な国民」だと筆者はいう。このままなし崩し的に事態を進めてはならない。(い)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
このページのTOPへ