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ふぇみんの書評

ニッポン沈没

斎藤美奈子 著/

  • ニッポン沈没
  • 斎藤美奈子 著/
  • 筑摩書房1600円
小気味良い評論でおなじみの文芸評論家の著者が、2010年8月から15年6月まで、話題の本や、世をにぎわすニュースにまつわる本を毎回3冊読んで書いたコラム連載を収録したもの。原発震災に、究極の人災・安倍政権復活。戦争、格差と貧困、メディアの凋落、原発再稼働…と、激動の社会のありようを、著者はあぶり出し、切れ味鋭く斬っていく。  自分の主張の補強のためでないから、百田尚樹(『永遠の0』)や田母神俊雄(軍事評論家)なども読むが、その「とほほ」さを衝くコメントが秀逸。一方、若手社会運動家や思想家が提唱する「お任せ型から参加型へ」という社会参加の形態を、選挙で勝てないなら意味がないとチクリ。「女子力」ブームや女子の貧困、「はしゃぎすぎ」なピケティ・ブームなども頷かせる。  あとがきの日付は安保法成立前日。わずかな救いは、今回の市民の動き、と著者。知に裏打ちされた鋭さと、次の一手を生み出す軽やかさを教えてくれる。(登)

みうらひろこ詩集 渚の午後 ふくしま浜通りから

みうらひろこ 著

  • みうらひろこ詩集 渚の午後 ふくしま浜通りから
  • みうらひろこ 著
  • コールサック社1500円
浪江町に住んでいた著者は、2011年3月11日の津波で被災し、現在は亡くなった娘夫婦に代わり、残された孫と共にふくしま浜通りに暮らしている。震災から4年たった今も、自宅には放射線量が高く戻れない。避難場所では母も亡くしている。  当時は書く気力も起きなかったという著者だが、「あの日古里を追われた16万の中の1人として」言葉を残し、本作発表へと至った。  国や東電への怒り、悲しみ、苦しみは、思い出と混ざり合う。  かつて交付金で催された娯楽行事や遊戯施設での記憶、原発を訪れる官僚や大臣の無責任な声、避難先で交わされる噂話、何気ない些細な言葉から深い情感の世界が広がる。それは人や牛やカエルたち、生きものすべてへの思いへと通じている。  「いつの日か古里へ帰ってゆくためにも」、リュックサックは「ちいさなもので丁度いい」との語りから、数十万年という時を見据えての希望を受け取った。(梅)

森のなかのスタジアム 新国立競技場暴走を考える

森まゆみ 著

  • 森のなかのスタジアム 新国立競技場暴走を考える
  • 森まゆみ 著
  • みすず書房2400円
 オリンピックのために国立競技場を解体し新競技場を建設することに疑問を持ち、著者は町並みや建築物保存の市民運動で知り合った10人の女性たちと「神宮外苑と国立競技場を未来に手わたす会」を立ち上げた。そして多数の市民と建築家などの専門家と手を組み異議を唱え続けた。本書は活動の2年弱を日記風につづった記録。  シンポジウムや記者会見、「キラキラ外苑ウォーク」、「国立さんを囲む会」などのイベントで目の回るような忙しさの中、賛同者を探して人に会い、会議のあとには食べて飲んで…。「活動を始めるといい仲間ができ、いい出会いがある」とは著者の真骨頂。しかし、国立競技場は解体された。  突き動かされ、人を巻き込む市民運動として読み応えがあり、また展開していく様子に心躍った。  近未来的なザハ案は「粛々と暴走」したが、戦争法が強行採決された翌日、突然見直しが宣言され、結果的に白紙撤回へ。著者は今、神宮外苑の再生を夢見る。(三)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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