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ふぇみんの書評

証言記録 市民たちの戦争 ① 銃後の動員ほか

NHK「戦争証言」プロジェクト 編

  • 証言記録 市民たちの戦争 ① 銃後の動員ほか
  • NHK「戦争証言」プロジェクト 編
  • 大月書店2600円
戦争体験者の高齢化が進むなか、証言を記録するために2007年に発足した、NHK「戦争証言」プロジェクト。本書は09年から放映されたシリーズの書籍版。  映像を見るかのように、体験者の語る情景が立ち現れ、苦しくなりつつもあっという間に読了した。学徒動員された軍国少年・少女が不器用にも懸命に武器や飛行機を作った手順、軍に動員されて海に散った漁師の町静岡・焼津港の船と船員、米軍が上陸したテニアン島で母と妹を殺した男性の苦しみ、配給と引き替えに避難を禁じられた青森の空襲で幼い娘を失った女性が今でも作り続ける娘の服、引き揚げの過程で外国兵にレイプされて妊娠した女性たちの堕胎をした医学生たち…。当時は加害の意識はなかったという証言もまた、戦争の本質を表しているのだろう。だから戦争はしてはいけない、と。聞かれていない証言が被害だけでもまだまだある。それをどう受け止め生かすのか。戦後世代の責任を強く感じた。(登)

佐々木靜子からあなたへ 女のからだと医療・性暴力・人権

佐々木靜子 著

  • 佐々木靜子からあなたへ 女のからだと医療・性暴力・人権
  • 佐々木靜子 著/本書編集委員会 編
  • 教育史料出版会1500円
 2013年に亡くなった産婦人科医、佐々木靜子さんの遺稿集。本書を読む間、佐々木さんの口調が耳元で聞こえるようで、あたたかい、不思議な感覚だった。  1980年に発覚した富士見産婦人科病院事件では、1300人以上の女性が必要のない子宮全摘手術や卵巣摘出手術を受けた。その被害者支援に唯一、産婦人科医として立ったのが佐々木さんだ。日本の患者の権利運動の原点ともなるこの事件から、佐々木さんは患者と医師、女性と医療の関係を問い返し、その方向性を示した。子宮は子産み道具ではないという当たり前の論理を定着させ、その後の子宮筋腫治療の在り方も大きく変えた。それは“子宮と地球にやさしい病院”「まつしま病院」の開院や「性暴力救援センター東京」開設につながる。  被害者支援を決めるとき背中を押したのは、亡き父の化身としか思えない白い蝶の3度の出現だったという。スーパーウーマンではない童女がそこにいる。(矢) 

右傾化する日本政治

中野晃一 著

  • 右傾化する日本政治
  • 中野晃一 著
  • 岩波書店780円
 今、私たちの前に立ちはだかるものは何か。著者は日本政治の「新右派」への転換と右傾化をテーマに研究を続けてきた。抑制する政治勢力を欠き、立憲主義などの民主主義の根本ルールや制度さえゆがめる点で、現在の日本政治の右傾化は深刻と著者は危惧する。  1980年代から「政治の自由化」として始まった新自由主義と国家主義に立脚する「新右派」への転換が、今日の「反自由の政治」をもたらしたプロセスを解明するのが本書のねらいだ。右傾化は小泉や安倍の登場で突然始まったものでも、安倍の退場で終わるものでもない。右傾化は支点が徐々に右に動く振り子のように、過去30年ほどの長いスパンで展開したという。  暴走する「新右派」連合に代わるオルタナティブは可能か。著者は、選挙制度改革、新自由主義との訣別、左派運動の他者性に連帯を求める形への転換が必要とする。  課題は大きいが萌芽がないわけではない。徹底した分析の先に希望を見出したい。(ね)
【 新聞代 】(送料込み)
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 6カ月4,500円、1年9,000円
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 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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