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ふぇみんの書評

性からよむ中国史 男女隔離・纏足・同性愛

スーザン・マン 著 小浜正子ほか 監訳 秋山洋子ほか 訳

  • 性からよむ中国史 男女隔離・纏足・同性愛
  • スーザン・マン 著 小浜正子ほか 監訳 秋山洋子ほか 訳
  • 平凡社2800円
明・清の時代から現代にいたるまで、中国での性のとらえ方や家族観など、セクシュアリティーやジェンダーのありようを考察した研究書。かつて女性の美徳とされた「纏足(てんそく)」は、西洋的価値観が入ると「野蛮な風習」と廃絶され、纏足をしない自然な足が20世紀の「モダンガール」の象徴の1つになるなど、さまざまな変遷の過程がおもしろい。  現代中国とは違い、男女隔離が規範とされた伝統社会では同性愛嫌悪は見られず、同性愛の物語が多く作られている。ある地方では親の決めた結婚に抵抗した女性たちが助け合って共同生活を送る習慣があったという。国家、身体、 医学、芸術、異文化など多面的なアプローチで性をとらえようとしている点が興味深い。  社会・文化、時代によって規範が変わるのは当然だが、あらためて世界には多様な性のあり方が存在すると認識した。共通点もありそうな同じアジアの日本の性の歴史も探ってみたくなった。(ぱ)

すぐそばにある「貧困」

大西連 著

  • すぐそばにある「貧困」
  • 大西連 著
  • ポプラ社1500円
  著者は、ホームレス状態の人の相談支援活動をしているNPO「自立生活サポートセンター・もやい」の理事長。22歳だった5年前、友人に「ひまなら炊き出しに来てみない?」と誘われて東京・新宿中央公園でカレーを配ったのが支援初体験。手が触れたらいやだなとか、怒鳴られたらどうしようと、おっかなびっくりだった一人の青年が、「貧困」とは、「支援」とは何かをさぐりあてていく過程が記される。  ある河川敷に暮らす男性は、亡父の残した借金から家財を失い、自分も脳梗塞で仕事をなくす。ある若い女性は、DVの夫から逃れたものの、生家では弟の乱暴なふるまいに心を病み、仕事をするのも難しい。著者は、貧困の重層的要因を解説しつつ、貧困が特別なものではなく、どんな人も何らかのきっかけが重なれば簡単におちいってしまうことを、一人一人の人生から素直な筆致で伝える。俯瞰的視野と読みやすさの両方を兼ね備えている。(ま)

沖縄ジェンダー学2 法・社会・身体の制度

喜納育江、矢野恵美 編著

  • 沖縄ジェンダー学2 法・社会・身体の制度
  • 喜納育江、矢野恵美 編著
  • 大月書店1900円
 琉球大学国際沖縄研究所による「沖縄ジェンダー学」シリーズ(全3巻)の第2巻。社会で承認された価値観にもとづいて制定された法や規範である「制度」を、ジェンダーの視点と、沖縄という特徴のある社会の中でひもとき、発信するために編まれたのが本書。  強い家父長制による抑圧構造と、暴力の源とも言える米軍基地に囲まれた中で、既存の「制度」は沖縄の女性たちの救いとなったのか、または抑圧になったのか、いくつもの切り口から考察する。  沖縄におけるDVと若年出産の関係、北欧の性犯罪・DVの非親告罪化が指摘される。非親告罪化はまさに今議論の的だ(第6章)。  本土出身の沖縄在住研究者と弁護士の対談(第9章)は、“外側”から沖縄社会を分析する。仏壇・位牌を継承する男性長子が尊重される歪み、盆など「家」の行事で性別役割が押し付けられる点を指摘する。  だが、それらの切り口から戦争や軍隊の暴力の記憶/痛みが社会の根底にあると理解した。(三)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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