- 新安保法制は日本をどこに導くか
- 柳澤協二 著
- かもがわ出版900円
|
|
安保法案反対の声が広がっているが、新規立法に10本の改正案からなる本法案は「わかりにくい」。防衛官僚を40年務めた著者も言う。本書で著者は、ばらばらなピースを見事に合わせて法案の全体像、日本の行く末を描き出した。
著者が一番危険と感じているのは、自衛隊法95条改正。現場の判断で自衛官の武器等を防護できるものを、米軍や他国軍の武器等もできるように。すると中国のシーレーン防衛行為が「重要影響事態」(重要影響事態安全確保法)に→米軍などを後方支援→自衛隊法95条を根拠に現場で戦闘行為→「存立危機事態」→集団的自衛権行使→日本にミサイル…と「シームレス」につながっていくのだ。そして安倍首相の悲願である「対等な日米同盟」が実は米国の言いなりに世界中で戦闘行為に参加することだというのも明らかにする。
安倍政権に対抗するには「防衛戦略を持つ護憲派」になることが重要との意見に納得。本書を持って地元の議員を訪ねよう。(登)
国防政策が生んだ沖縄基地マフィア
平井康嗣、野中大樹 著
|
- 国防政策が生んだ沖縄基地マフィア
- 平井康嗣、野中大樹 著
- 七つ森書館1800円
|
|
「基地マフィア」とは、ギャングや暴力団ではなく、政策に大きな影響力を持つ密室性の高いインナーサークルや交渉責任者を指し、基地建設による巨額の公共事業と振興費、基地利権に群がる魑魅魍魎だという。彼らが、新基地を巡って地方自治体首長や中央との人脈と金をどう動かしたのか。
県建設業協会副会長でもあった東開発グループの仲泊弘次会長と県商工会の荻堂盛秀会長は、1997年の名護市住民投票の際、数千万円の官房機密費を政府から受け取り、地元で差配、その後の選挙でも基地容認派当選のために動く。こういった事実が、告発者や取材による証言で明らかになる。
このような仕組みは原発や巨大開発、さらに今問題となっている「新国立競技場」にも絡んでいるだろう。
後半は「オール沖縄」を担う人々へのインタビュー。「オール沖縄」の動きで、基地マフィアは息を潜めているように見える。マフィアを生き返らせないために市民の力が問われる。(こ)
- 学生のためのピース・ノート2
- 堀芳枝 編著
- コモンズ 2100円
|
|
平和研究・平和学を学ぶ大学生向けのテキストとして書かれた同前書の全面改訂版。冒頭部分は、日常私たちがどこでも口にするエビや若者なら知っているであろうファストファッションを題材に、アジアの人々と日本の私たちとの関係について書かれている。
非暴力、平和の構築のための具体的活動に関しては、戦後の日韓関係の再検証と現在の取り組み、シャプラニールなどをはじめとする地道で険しい海外NGOの活動から学びを深めることができる。
個人的で、医学分野のことと思われがちな妊娠、出産について触れられているのは有意義だ。女性のからだへの国家の介入、女性たちの運動等についてを知ると、自分の体から社会が見えてくる。
平和構築、国際協力の題材は、日常のありふれた場にあり、すべてがつながっている。ポイントとされるのは、非暴力、構造的暴力、他者の視点、歴史の4点だ。興味のある章を入り口にできるので、ぜひ手にとってほしい。(梅)