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ふぇみんの書評

日本人「慰安婦」 愛国心と人身売買と

「戦争と女性への暴力」リサーチ・アクション・センター 編

  • 日本人「慰安婦」 愛国心と人身売買と
  • 「戦争と女性への暴力」リサーチ・アクション・センター 編
  • 現代書館2800円
  日本軍「慰安婦」問題が浮上してから20年以上たつのに、その被害を否定するために、「慰安婦」は「性奴隷」でなく「公娼」で商行為であるとする論が、いまだに流布されている。   本書はVAWW RAC日本人「慰安婦」プロジェクトチームが、2011年から3年をかけて、“売春婦なら被害者ではない”かのように扱われがちだった日本人「慰安婦」の被害を、再定義したいと取り組んできた共同研究の論稿集だ。  彼女たちの出自や、どのように軍や業者が関与し「慰安婦」として徴集され、戦中戦後生きてきたかを、当時の公娼制度や彼女たちの語るライフストーリー で明らかにする。  「慰安所」生活が「なつかしく」思えるほどの絶望的な公娼時代、「お国のため」「死んだら靖国に祀られる」と愛国心まで搾取された。戦後も「売春婦」とそうでない女性とに二分する家父長制イデオロギーのもとで差別され、沈黙を強いられてきたことに憤りを覚えた。(晶)

帰還兵はなぜ自殺するのか

デイヴィッド・フィンケル 著 古屋美登里 訳

  • 帰還兵はなぜ自殺するのか
  • デイヴィッド・フィンケル 著 古屋美登里 訳
  • 亜紀書房2300円
  イラクから帰還した米兵のPTSDは、一部ではよく知られている事実だ。毎年240人以上が自殺(未遂は10倍にもなる)し、心身の障害、薬物依存、家庭崩壊、ホームレス化は枚挙にいとまがない。本書はピュリツァー賞受賞の気鋭ジャーナリストが、帰還兵本人にとどまらず、その家族、医療関係者、国防総省上層部まで取材し、精緻に、体系的にまとめた衝撃作である。  米兵に限った話ではない。後方支援の名の下、日本はこれまで5年間にのべ1万人の自衛官をイラクに派遣、うち28人が帰国後に自殺している。兵士の苦痛、家族や周囲の人たちの無力感と焦燥は時代も場所も問わない。勝敗とは無関係に、攻めた方も攻められた方も、最前線だろうと後方だろうと、すべてに共通する現象だ。ただ、これまで伝えられなかったに過ぎない。ここにあるのは、映画では描きにくい戦争の真実であり、集団的自衛権行使の向こうに見える日本の姿だ。(た)

いいがかり 原発「吉田調書」記事取り消し事件と朝日新聞の迷走

同書編集委員会 編

  • いいがかり 原発「吉田調書」記事取り消し事件と朝日新聞の迷走
  • 同書編集委員会 編
  • 七つ森書館2400円
まず言おう。朝日新聞の報道は福島原発の吉田所長証言を白日の下に引き出した貴重なスクープであったこと。「命令」や「撤退」の語が間違いだったならば、訂正記事を掲載すればすむこと。ましてや記事自体の取り消しや記者の処分などはあってはならないこと。この事件は朝日新聞〈吉田調書〉記事「誤報事件」ではなく、「記事取り消し事件」と呼ぶべきこと。  この本は、事件を「経営による編集への介入」、「原子力ムラ=ニュークリアパワー(核権力)」の攻勢によるジャーナリズムの危機として捉えた鎌田慧、花田達朗、森まゆみの3人が編集代表となり、ジャーナリスト、研究者、弁護士らが筆を執り、事件を分析、評論した。  第2章では50人の多岐にわたる人々が朝日新聞への叱咤激励の声を寄せる。50人に絞ったが、もっとたくさんの声があったと聞く。  この事件を「朝日が権力に屈し、『戦争ができる国』への歩みに弾みがついた」事件にしないためにも、本書はもっと読まれていい。(ね)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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