WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

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ふぇみんの書評

語り継ぐ女性学 次代を担う女性たちへのメッセージ

神戸女学院大学女性学インスティチュート 編

  • 語り継ぐ女性学 次代を担う女性たちへのメッセージ
  • 神戸女学院大学女性学インスティチュート 編
  • 御茶の水書房2500円
  神戸女学院大学での授業をもとに、女性学に初めて出会う女子学生たちにこの学問の魅力を届けるために本書は編まれた。ジェンダーとは何かといった基本的な概念の説明もあるが、母と娘の関係やセクハラ、デートDV、女性のからだなど、若い女性たちが身近に感じるテーマから入って、日本社会におけるジェンダー構造の問題へと導いていく。  「語り継ぐ」というタイトルには積極性が込められている。ストーカー規制法の背後には桶川事件など女性たちの犠牲があり、男女雇用機会均等法におけるセクハラ防止措置義務には、女性たちによる多くの裁判闘争がある。つまり、現在享受できる女性の権利は、過去の犠牲や運動の積み重ねによる恩恵であるという。女性が現状を変えていくことこそが「語り継ぐ」ことの実質という視点がある。  スクールセクハラ防止全国ネットや民間シェルターに関わる執筆者を含み、女性学が持つ行動的側面に改めて気付かされる。(ま)

紙の砦 自衛隊文学論

川村湊 著

  • 紙の砦 自衛隊文学論
  • 川村湊 著
  • インパクト出版会2000円
 自衛隊が、小説や映画の中で、どのように形象・表象化されてきたか―。それを通して、自衛隊の存在を考察した自衛隊論である。  著者は、自衛隊が “空っぽの軍隊”という本質は変わっていないが、自衛隊自体の変容と国民の“眼”が変わったことで、現実的な存在感は変わったとする。以前の文学では自衛隊は、空虚な、否定的な存在で書かれる(それは世間の見方でもある)ことが多く、マジンガーZなど、本質的には意志も目的も持たない戦闘用ロボットのアニメの英雄たちが、自衛隊の暗喩であったのではないかという指摘が非常に興味深い。  今は、好戦的な政権と連動するように、自衛隊の本質には触れず、明るい、肯定的なイメージとして国民に浸透させるような、プロパガンダ小説や映画が着実に成果を上げているという。  憲法との絶対的矛盾を抱える自衛隊の在り方を、国民レベルで議論せねばという思いを喚起させられる書である。(う)

いま、なぜ食の思想か 豊食・飽食・崩食の時代

河上睦子 著

  • いま、なぜ食の思想か 豊食・飽食・崩食の時代
  • 河上睦子 著
  • 社会評論社2300円
 まずは無形文化遺産となった「和食」について、著者は戦前の米食推奨などを例に、イデオロギー教育の側面を指摘する。一方、「洋食」には、明治期の富国強兵政策により外形的に西洋食を取り入れたものの、古代ギリシャ哲学やキリスト教ほか諸文化を土台とする西洋の食の思想・哲学は抜け落ちている。  ベジタリアンは平和的というイメージにも誤解がある。ヒトラーはベジタリアンだった。彼は「共食」を国策とし、そこからユダヤ人や障がい者などを排除するという形で巧妙にベジタリアニズムとナチス政策を近づけた。栄養学者、そして主婦たちもナチズムの担い手になった。  最終章はミナマタとフクシマ。母たちの「いのちのくるしみ」と、葛藤を抱えつつジェンダー問題を環境倫理問題として捉えたフェミニズム思想の関連が興味深い。(梅)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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