日本政治のオルタナティブ 憲法を使え!
田村理 著
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- 日本政治のオルタナティブ 憲法を使え!
- 田村理 著
- 彩流社1900円
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憲法を使え! 挑戦的な言葉に触発され、興味深く読める一冊。憲法が活かされていないと感じている人は多いはず。民主党政権時の「決められない政治」は安倍政権の「強行政治」に拍車をかけ、多様な意見が分断されたまま合意されず、共通番号制、秘密保護法が成立、さらに戦争法案、憲法「改正」へと。著者はこの背景にあるのが「信じる政治」だという。
多くの人たちは、国家は自分たちを守るためにあり、人権とは国家が与えてくれる利益だと考え、合理的な説明がなくても無防備に信頼を与えてしまう。このような政治のあり方が「信じる政治」をつくる。その結果、公権力をコントロールする術を失ってしまい、さまざまな弊害を生み出している。
「憲法は政治によって実現される」「信じていても救われない」。では「異なる選択肢を提示する立憲主義と憲法を使ってみるべき」「政治を動かす原動力は、国民の意識と行動だ」と。私たちに憲法を使うための知恵が求められる。(圭)
憲法のポリティカ 哲学者と政治学者の対話
高橋哲哉、岡野八代 著
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- 憲法のポリティカ 哲学者と政治学者の対話
- 高橋哲哉、岡野八代 著
- 発行=白澤社 発売=現代書館2200円
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戦後70年、日本の平和と民主主義を支えてきた平和憲法が、廃棄されようとしている危機の時代に、約20年前、日本軍「慰安婦」問題を通じ出会った哲学者と政治学者が、法律論とは違う角度から「改憲」問題を縦横に語り合う。
本書はまず、自民党改憲案が“憲法とは国家的暴力から個人の尊厳を守るためにある”とする立憲主義とかけ離れていることを批判。さらに「立憲主義には9条こそが似合う」「個人の尊厳と“国防軍”は矛盾する」と述べる。
そして、日本国憲法には、天皇制があること。安全保障は完全にアメリカに依存し沖縄に基地負担を強いていること。自衛隊の創設により平和の理念が実行されたことはない等、戦後政治の問題点を語る。
最後に、紛争への人道的介入や死刑制度、現行憲法が保障する「わたしたち」の内実等、憲法をめぐる思想的問題が論じられる。
「未来を奪おうとする力に抵抗するために」何をなすべきなのか、を本書は考えさせる。(晶)
フル ボディ バーデン 上・下 ロッキーフラッツの風下に育って
クリステン・アイバーセン 著
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- フル ボディ バーデン 上・下 ロッキーフラッツの風下に育って
- クリステン・アイバーセン 著
- 凱風社 上1600円 下1800円
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「ロッキーフラッツ」は、米国コロラド州デンバー近くにあり、近隣住民はダウケミカルの家庭用洗剤工場だと思っていたが、実はプルトニウム・トリガー(起爆剤)を生産する核兵器プラントだった。
工場では1957年と69年に火災が起きて放射性物質を放出、ずさんな管理や漏洩が明らかになるにつれ抗議運動も起こるが、施設移転の要求に、米国エネルギー省は「安全性」と閉鎖による経済的損失を強調。98年にはFBIによる強制捜査が行われるが、結局起訴されず、調査資料は非公開となった。地域住民には健康被害が現れ、集団訴訟が起こるが…。
著者は子ども時代から家族で工場の風下に住み、一時は工場に職を得るが、退職後、プラントの全容を明らかにしたいという「燃え上がるような欲求」で執筆に12年を費やす。
「ロッキーフラッツ」と「『飲酒癖』の父のいる家族」という2つのテーマが、プラントでの事態と家族の日常として同時進行で描かれ、小説のようで一気に読んだ。(ね)