議会は踊る、されど進む 民主主義の崩壊と再生
谷隆一 著
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- 議会は踊る、されど進む 民主主義の崩壊と再生
- 谷隆一 著
- ころから1600円
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東京・多摩地区の東久留米市で2010年に“リベラル派”市長が誕生した。しかし、市長は4年の任期中、公約を翻し、専決処分を行うなど、議会や市の職員、市民と対立。民主的とは言いがたい政策を続け、あっさり1期で辞めていった。民主党が政権を取り、第2次安倍内閣が始まる時期と重なる。その混乱の市政を、同市などで地域情報紙を発行する著者が、元市長本人など関係者に話を聞き、読者に民主主義とは何か、を考えさせる。
市長が議会と対立したが市民に直接訴えることで、革新市政が16年も続いた東京都狛江市や、都道建設で住民投票を実現させた東京都小平市の市民運動の例も加えた。提案のしかた、話せる場づくり、決定に市民が参加する方法など、地方自治は、まさに“民主主義の学校”だ。 市長も議会も市職員も市民も、絡まり合って、案外身近にヒントがあることを示す。
統一地方選真っ最中の今だけでなく、参考にしたい。(三)
東京新聞にコラムを連載している現職看護師の著者の、小説第3集。病棟勤務の看護師の姿を淡々と描き出す。
ギリギリの人数で、日勤・夜勤の3交代制、2交代制のシフトを組む大変さ。育児中の看護師が働き続けるために、シングルの看護師の負担が増すが、そのことを「犠牲」でなく「支援」と表現する強さ。患者や家族への深入りも介入も避けつつ、背中から支える思いやり。
一人でもわがままを言いだすと、バランスが崩れることがわかっているから、一歩下がって全体を見通す。ここに出てくるベテラン・中堅看護師たちは、手技一つとっても、できて当たり前で誰からも褒められないが、日々起こる小さな事件の連続に、緊張感を持って、最良の選択を積み重ねている。著者の、看護という仕事への誇りや深い愛着を感じた。
精神科病棟への長期入院が問題となっている昨今、退院だけが解決でないことも教えられた。(矢)
耳慣れている電磁波という用語を、著者は電磁放射線と呼ぶ。英語ではelectromagnetic radiation。原発から放出されるのも放射線。その質に違いはあるものの電磁波も「放射線」であることを意識してほしいと言う。色もなく、匂いもない。携帯電話基地局周辺住民に出る鼻血、吐き気、疲労感といった症状。遮断したり、逃げることしかない健康回復の方途。2つの放射線が共有するものが次々と挙げられる。しかも電磁放射線はスマホや電子レンジだけでなく、子機付きコードレス電話やコードレスインターホンなど思いがけない物からも出ている。
加えて、柔軟剤や芳香剤の化学的な香り成分、ゴキブリ駆除剤やペットのノミ防止剤に含まれるネオニコチノイド系農薬、遺伝子組み換え食品などが複合的に及ぼす健康への影響に警鐘を鳴らす。危険に満ちている日常生活をまざまざと知らされるが、個人的防護策と社会的な働きかけも提案され、こわいけれどポジティブな本である。(ま)