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ふぇみんの書評

子どもに貧困を押しつける国・日本

山野良一 著

  • 子どもに貧困を押しつける国・日本
  • 山野良一 著
  • 光文社 820円
 日本の子どもの貧困率は先進諸国でワースト4位。著者は、ていねいに貧困率の説明をする。日本の子どもたちの貧困の「深さ」、つまり貧困ラインとのギャップもまた大きいという。  しかもシングルマザーの就労率は高く、8割が働いているが所得は低い。子どもとの時間も短く、資産=貯蓄もわずか。  極めつけは、政府による所得再分配が2000年代半ばには、逆に貧困を拡大していたという恐ろしい事実である。著者は、子どもたちの貧困とは、自然にできるものではないし、経済のグローバル化による必然でもないという。ほかの先進諸国は、所得では大きかった貧困率を、再分配後は軽減している。  保育予算も、教育予算も、最低レベル。その分、子どもの教育費は家庭だのみ。  一昨年成立した子どもの貧困対策法が、不十分な内容になったことを痛烈に批判しつつ、今、なんとかしなければ、子どもの未来はないと、呼び掛ける。(衣)

国策と犠牲 原爆・原発 そして現代医療のゆくえ

山口研一郎 編著

  • 国策と犠牲 原爆・原発 そして現代医療のゆくえ
  • 山口研一郎 編著
  • 社会評論社2600円
 本書は、医療政策や科学技術が、国のほんの一握りの人たちにとっては有意義であっても、多くの人々に多大な被害や被災をもたらしてきた事例を検証する。  戦時中の七三一部隊の人体実験、原発、水俣病、三池三川鉱炭塵大爆発…「国策」により、多くの人々が犠牲になった事例が山ほどある。  長崎で被爆し、救護活動にあたった医師として有名な永井隆。彼の「原爆投下は神の摂理」「原子力の平和利用」という言動が、日本や米国の原子力政策に巧妙に利用された事実を問い、福島の原発事故後「放射能は心配ない」と言った山下俊一・福島県放射線健康リスク管理アドバイザーとの共通点を指摘する。犠牲がみえにくい形で「脳死」臓器移植・尊厳死、遺伝子、iPS細胞など人体の部品資源化・商品化が進んでいることへの警鐘も。  「国防」「経済発展」「人命救済」「健康増進」などという名目で、国民の犠牲が連綿と続いていることに、改めて恐怖を覚える。(く)

自分で考える集団的自衛権 若者と国家

柳澤協二 著

  • 自分で考える集団的自衛権 若者と国家
  • 柳澤協二 著
  • 青灯社1400円
 40年間防衛官僚として仕事をしてきた著者が、「感情的」「せつな的」「言葉尻を捕らえる」のではなく、「一身独立」のため、戦略的に安全保障を考えるべきと、自らの子ども、学生時代、官僚時代の経験を交えながら話を進める。著者がぜひ若者に伝えたいテーマに違いない。  焦眉の中国と尖閣、北朝鮮のミサイル、沖縄の基地問題など、最終章では集団的自衛権について、ていねいに批判的に論じる。  他から強制されない、他を強制しない世界をどう作るのかが安全保障の基本だ、と著者はいう。だが、イラク戦争にあたって、本来は手段であるはずの日米同盟なのに、その維持が目的になってしまっていたと自省。日米同盟の「バカの壁」を崩す機会が90年代にあったが、結局、塗り固める結果となってしまったと述べる。  話し言葉なので、平易でわかりやすいが、経験に基づいた内容は広く深い。「感情的」な某国首相には、ぜひ読んでもらいたい。(ね)
【 新聞代 】(送料込み)
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 6カ月4,500円、1年9,000円
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 加入者名:婦人民主クラブ
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