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ふぇみんの書評

福島原発事故 被災者支援政策の欺瞞

日野行介 著

  • 福島原発事故 被災者支援政策の欺瞞
  • 日野行介 著
  • 岩波新書780円
 冒頭、2013年初夏の「白黒つけずに曖昧に」「左翼のクソども」という「暴言」ツイッターの主が、復興庁の「子ども・被災者支援法」基本方針担当、水野参事官だと明らかにする過程は探偵小説のようだが、問題はこれからだった。  本書は、福島県民健康管理調査で秘密会議が行われ、健康被害を矮小化しようとしたことを暴いた『福島原発事故 県民健康管理調査の闇』の続編となる。  2012年6月に成立した「子ども・被災者支援法」は自主避難者や子どもへの支援のための法律のはずだったが、1年を過ぎても方針は先送りされ、線量基準の策定を省庁間で押し付けあう。ようやく13年8月に発表された方針は「100mSv以下では健康被害は生じない」という前提の帰還政策だった。  政府による支援法の「骨抜き」の動きが詳細に明らかにされる。腹立たしいことこの上ない。何が隠蔽されているのか、「被害の総体の報道に尽力したい」とする取材に引き続き注目したい。(ね)

はるかにてらせ

栗林佐知 著

  • はるかにてらせ
  • 栗林佐知 著
  • 未知谷2000円
 悪環境のバイトの職場、子どもの頃受けたイジメ、子育てをする母親へのプレッシャー、家族間の愛憎など、毎日傷つきながら生きる、6つの短編の主人公たち。痛み、苦しみ、恨み、自責…。このつらさは今にはじまったことではないし、と、あきらめる複雑でこじれている心情が細かく描写される。  主人公たちが、ヒリヒリとした痛みによって力が奪われ、ぐるぐると渦の中に沈むような日常を過ごす時、突然パッと不思議なものたちが現れる。救世主のような幽霊、魔女のような行商の老婆、親友のような機械、身代わりをする怒り顔の石仏。主人公たちはこの「不思議たち」と向き合い、自問自答する。そこで希望がみえた瞬間、「不思議たち」は去っていく。  わびしくても不条理でもきっと誰かが共感してくれる、何かが見守ってくれているという、著者の願いが感じられた。今の生き苦しい日々を過ごすには、メルヘンの力こそ心強い。(み)

「ゆとり」批判はどうつくられたのか 世代論を解きほぐす

佐藤博志、岡本智周 著

  • 「ゆとり」批判はどうつくられたのか 世代論を解きほぐす
  • 佐藤博志、岡本智周 著
  • 太郎次郎社エディタス1700円
  「学力不足」「コミュニケーションがへた」など、ネガティブに語られることが多い「ゆとり世代」。狭義には1998年に改定された小中学校学習指導要領で学んだ世代=1987年4月~2004年4月生まれの人々を指す言葉だが、実際はもっと広く曖昧に使われる。  「ゆとり世代」「ゆとり教育」という曖昧な、しかも否定的に使われる言葉に、40代半ばの2人の大学教員がメスを入れたのが本書。  「ゆとり」という言葉の使われ方の変遷、「ゆとり教育」とは何だったのか、「団塊世代」「シラケ世代」といった世代呼称とは違って、教育と結びつけた呼称であることの問題点。「ゆとり世代」と呼ばれる当事者たちの座談会も収録されている。  「国策」と絡みながら変化する国の教育方針。いまこそ「教育」とは、「学力」とは、「生きる力」とは、と教育の根源を問う時。同時に「ゆとり世代」などと“くくる言葉”に注意深くあらねばならないことを、豊富な資料を駆使した本書は教えてくれる。(JO)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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