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ふぇみんの書評

虚像の抑止力 沖縄・東京・ワシントン発 安全保障政策の新機軸

新外交イニシアティブ 編

  • 虚像の抑止力 沖縄・東京・ワシントン発 安全保障政策の新機軸
  • 新外交イニシアティブ 編
  • 旬報社1400円
沖縄の米軍基地問題で日本政府が主張する、在沖縄・米海兵隊の「抑止力」。本書は、日米で政策提言活動などを行う「新外交イニシアティブ」編集のもと、柳澤協二(元内閣官房副長官補)、屋良朝博(元沖縄タイムス)、半田滋(東京新聞論説委員)、マイク・モチヅキ(ジョージ・ワシントン大学教員)ら、外交・防衛・安全保障の専門家たちによる「抑止力」をめぐる評論と対談で構成されている。  沖縄の米海兵隊は、太平洋地域を常に巡回する艦船部隊。想定有事や、米国の軍事戦略の変化の観点などからも、「海兵隊が」「沖縄」にいる必要はないことが明らかに。むしろ米国では多様な選択肢が議論されているという。問題は凝り固まった日本政府の従属姿勢や米国の政治の中心地ワシントンに日本の外交ルートが少ないこと。  軍事的リアリティーに立脚し、ワシントンに多方面の外交ルートを得るという提言は、基地反対運動の側にも唯一の有効手段であると同時に、希望である 。(登)

「戦場体験」を受け継ぐということ ビルマルートの拉孟全滅戦の生存者を尋ね歩いて

遠藤美幸 著

  • 「戦場体験」を受け継ぐということ ビルマルートの拉孟全滅戦の生存者を尋ね歩いて
  • 遠藤美幸 著
  • 高文研2200円
著者は日航の客室乗務員をしていたとき、機内で偶然出会ったある男性を通じて、ひとつの戦場を知ることになる。拉孟(らもう)。  戦争中、中国雲南省西部にあったビルマルート(米英が蒋介石の国民政府に軍需物資を送った援蒋ルートのひとつ)の軍事拠点で、100日にわたる凄惨な戦いの末、日本軍は1944年9月、全滅した。  日航を辞めて研究者になっていた著者は、元兵士たちの戦友会や慰霊祭に通い詰めて話を聞き出し、遠く拉孟へも足を運ぶ。手足を吹き飛ばされて自決することもできない兵士。戦場に連れて行かれ、兵士と同じように殺された「慰安婦」の女性たち。戦後も消えることのない現地の人たちの日本軍への憎しみ。戦場を訪れた者にしか書けないルポだ。  戦後日本が歩んだ道に、著者は日航機墜落事件後の自分たち社員を重ねて見る。過去にどう向き合うかという問いかけも重い。(室)

上野英信・萬人一人坑 筑豊のかたほとりから

河内美穂 著

  • 上野英信・萬人一人坑 筑豊のかたほとりから
  • 河内美穂 著
  • 現代書館2500円
  福岡県・筑豊の炭住に居を構え、炭鉱と坑夫を記録し続けた作家・上野英信。かつて留学した中国で「中国残留婦人」たちに出会った著者は、炭鉱労働者=棄民された人々の側に立ち続け、記録し続けた英信に強い共感をいだく。  満州国立建国大学時代の英信の同窓生から、英信の思想を現代に引き継ぐ人々まで、7年をかけて彼の魂の根っこを訪ね、代表的な作品を分析しながら、英信の思想のありかを深めていく。  英信は満州で高等教育を受け、43年に学徒出陣、広島で被爆した。戦後、京都大学に入学するが、エリートであることを降りて、炭鉱夫として筑豊に入った。  国策で、被害の側に、あるいは加害の側に立たされるかもしれない今、「捨てられた人々のそばに居ること。それは過去への贖罪であると同時に、現在の国策と未来の戦争への抵抗であった」という英信の生きざまに学びながら、「ひとりの犠牲も払わぬ社会でありたい」とする著者の思いが響く。(い)
【 新聞代 】(送料込み)
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 6カ月4,500円、1年9,000円
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