WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

  • HOME
  • >
  • ふぇみんの書評

ふぇみんの書評

行動する預言者 崔昌華 ある在日韓国人牧師の生涯

田中伸尚 著

  • 行動する預言者 崔昌華 ある在日韓国人牧師の生涯
  • 田中伸尚 著
  • 岩波書店3000円
故・崔昌華(チォエ・チャンホア)牧師の64年の生涯には東アジアの歴史が刻まれている。朝鮮半島北部で生まれ、少年期は日本支配の下、皇民化教育を受け、1945年の解放後はわずか16歳でキリスト者として共産主義者に逮捕・拷問される。生命の危険をおかして38度線を越え、島民虐殺の余波の残る済州島に渡り、憧れと期待をもってポンポン船に体を潜ませて渡日する。しかし日本は民主・平等の国ではなかった。  崔という名を「チォエ」と民族語音読みすることを要求し、指紋押捺を拒否し、同じ土地に住まう人間として在日の人々の尊厳の回復を求めた闘いは、「神の言の〈現実〉が必ずいつかその通りになると信じて闘った」預言者の姿だった。著者は崔牧師の内面にも迫り、皇民化教育に染まった内心にある天皇制への怖れや特別在留許可を失う不安を乗り越える自分との闘いも描く。ヘイトスピーチが広がる今、崔牧師が日本社会に巣くう差別の根を鋭く問う声が聞こえる。(ま)

アフガニスタン ぼくと山の学校

長倉洋海 著

  • アフガニスタン ぼくと山の学校
  • 長倉洋海 著
  • かもがわ出版2000円
アフガニスタン北東部、パンシール渓谷のポーランデ村に、「山の学校」はある。30年以上アフガニスタンへ通う写真家の著者が、2003年からその学校の支援を始めた。男女をきっちり分ける習慣が強い彼の地で、「男女共学は私たちのデモクラシー」という地域の人の言葉も著者の背中を押した。  NGOを立ち上げ、定期的にポーランデを訪ね、大人はもちろん子どもたちとも関係を築いていった。子どもたちの名前だけでなく、将来の希望や家族のことも覚え、子どもたちも著者のことを親しみを込めてオマールと呼ぶ。学校が整備されていくことで、なにより子どもたちの学びたい気持ちが膨らんでいく姿がよくわかる。多数の写真がページを飾っているが、厳しい自然の中で生活する子どもや大人の視線のまっすぐなこと  混迷した大統領選や政治の腐敗、女性の生活の困難など、すでに知られる現実を越え、本書がアフガニスタンの将来に思いを巡らす契機になってほしい。(三)

ベン・シャーンを追いかけて

永田浩三 著

  • ベン・シャーンを追いかけて
  • 永田浩三 著
  • 大月書店2800円
  第五福竜丸がビキニ環礁で水爆実験に遭遇した事件のシリーズを描いた、抵抗の画家ベン・シャーン。著者は、ベン・シャーンの生まれたリトアニアから、画家活動をしていたヨーロッパ、アメリカなどの地を旅し、この画家の生涯を辿っていく。そして、ユダヤ人への迫害や、「赤狩り」の時代に命懸けで抵抗するジャーナリストや科学者、詩人たちに想いを馳せる。著者はベン・シャーンの画集を携え、各地で出会った人々に好きな絵を選んでもらい、現地の人々と会話をしながら旅をした。 ベン・シャーンの絵は、韓国民衆芸術作家や戦後の日本社会へ発信する画家たちを支え、著者は絵の中で広島の被爆した母親の住まいとの意外な繋がりを偶然見つける。  様々な文化人の闘いが多く紹介されて、「そうだったのか」と読み進むうちに、著者の旅の予期せぬ出あいと発見がめくるめく広がる。多彩な展開だが、それぞれが繋がり広がり、読み終わると一つの絵が仕上がるようだ。(み)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ