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ふぇみんの書評

戦場体験キャラバン 元兵士2500人の証言から

戦場体験放映保存の会、中田順子、田所智子 編著

  • 戦場体験キャラバン 元兵士2500人の証言から
  • 戦場体験放映保存の会、中田順子、田所智子 編著
  • 彩流社2500円
2004年、元兵士たちの戦場体験を全国規模で聞き取りするプロジェクトが始まった。いま戦争を語れる人たちの中で、もっとも高齢なのが元兵士だからだ。残された時間は少ない。若者たちを含むボランティア参加の戦後世代が中心となり、これまで2500人余から体験談を聞いたという。  本書は、チームを組んで全国をキャラバンし、集めた元兵士たちの証言の一部と、取材チームの感想がまとめられている。元兵士たちの貴重な証言はもとより、それらをどう受けとめたかという戦後世代の座談会も読み応えがある。  この会のモットーは「無色・無償・無名」。ありのままの戦争に向き合おうとする。「なぜ特攻だけが注目されるのか」「護憲と言っている元兵士でも、戦友会や靖国に行くのはなぜだろう」「悪者を見つけて話を単純化させてしまうことで本質の理解から遠ざかってしまう」。ふむふむ。戦争をどう伝え残すかについて、重要なポイントがいくつも見られる。(室)

鶴見俊輔に学んだ精神医療

大河原昌夫 著

  • 鶴見俊輔に学んだ精神医療
  • 大河原昌夫 著
  • 日本評論社1900円
精神科医として統合失調症、アルコール・薬物依存、摂食障害患者などに関わり続けてきた著者が、その半生を振り返る書。  アルコール依存症をあえて「アル中」と呼び、統合失調症の人たちの川柳を大切に読みながら、患者との関係を楽しむ著者の姿勢の根底には、なだいなだの書物や鶴見俊輔との出会い、そこで育まれた思想がある。  家族会を重視してきたのも、なだいなだの取り組みを受け継いだものだ。摂食障害や発病をある出来事の最終的なあらわれと捉え、その背景にある家族の姿を見る。病気の源流を見るとき、必ずしもではないにせよ、そこには家族の抱える問題があると著者は言う。  多人数を診なければならない現在の医療事情と、入院の長期化、精神疾患患者を病院に閉じ込めてきた日本の歴史、そこには家族という病も潜む。見えなくさせられている精神疾患患者こそが、社会の問題を映し出しているのだと感じた。(梅)

旅の人、島の人

俵万智 著

  • 旅の人、島の人
  • 俵万智 著
  • 発行=ハモニカブックス 発売=河出書房新社1300円
 『サラダ記念日』で知られる歌人の著者が、3・11後、“ちょっと避難のつもり”で流れ着いたのが、沖縄・石垣島。生命力を取り戻していく息子とともに、島を好きなってしまった著者が移住して3年あまり。本書は、「旅の人というにはやや長く、島の人というにはまだ短い時間が流れた」日々が、歌とともに綴られている。  大の虫嫌いでインドア派の著者が、島の人に誘われて、息子と一緒におっかなびっくり島の自然と付き合っていく。息子が「遊ぶ海でなく、とる海」と呼ぶ、モズクやカラフルな魚を与えてくれる海。「本日が命日」と感じ食べる魚の命。個性豊かな島野菜、絶品泡盛、毎夜やってくる昆虫客…。ゆったりとした時間と命の鮮やかさ。  心身が解放され、魂が喜ぶ著者が島で生み出した歌も心にしみる。「旅人の目のあるうちに見ておかん 朝ごと変わる海の青あお」。島の人としての時間が積み重なるうち、著者の歌はこれからどのようになるだろう。(登)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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