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ふぇみんの書評

NHKと政治支配 ジャーナリズムは誰のものか

飯室勝彦 著

  • NHKと政治支配 ジャーナリズムは誰のものか
  • 飯室勝彦 著
  • 現代書館1700円
自民党は広告代理店と組んでテレビやインターネットによる世論形成という新しい手法を積極的に取り入れてきた。その大きな特徴は問題を単純化し、恣意的な対立点を作り出すことで社会を分断していくことにある。  元新聞記者である著者は、安倍政権によるNHKへの政治介入がメディア対策の大きな柱のひとつとして、「女性国際戦犯法廷」番組改変から現在の支配網の完成までの過程を分析していく。そこから浮かび上がるのは、メディア側の姿勢の問題である。本来「知る権利」のためにあるべき報道の自由、客観報道、取材源の秘匿などの原則が安易に理解されることで、逆に権力の意に沿った情報を垂れ流すことにつながっているという。  朝日新聞の「誤報問題」は、批判的メディアである新聞の信頼性を損ねただけでなく、報道への政治介入に対して「客観報道」という口実を与えることになった。報道の役割とは何かを改めて考えさせられる一冊である。(ち)

性的主体化と社会空間 バトラーのパフォーマティヴィティ概念をめぐって

大貫挙学 著

  • 性的主体化と社会空間 バトラーのパフォーマティヴィティ概念をめぐって
  • 大貫挙学 著
  • インパクト出版会3000円
フェミニズム・クィア理論の主要な論客の一人であるジュディス・バトラーの「パフォーマティヴィティ」概念。フェミニズムの主体としての「女」というカテゴリーを前提とすることの不可能性を論じたこの理論は、時に既存の秩序への抵抗を極めて困難なものとして想定し、フェミニズムを脱政治化してしまうという批判にさらされてもきた。  本書は、バトラー理論の「内部」にそれらの批判に応答する可能性を見いだし、社会学的観点から再検討を行う。  パフォーマティヴィティの「時間性」、そこに内在する「未来」への志向性に着目しながら著者が強調するのは、規範の引用と反復を行う「現在」が、予想もしなかった(再)文脈化の可能性を持った「未来」へと開かれているという点である。自分自身を、そして他者を「別のやり方で」想像することを保障する、「別の社会の可能性」が提示される。(芹)

死の棘・アスベスト 作家はなぜ死んだのか

加藤正文 著

  • 死の棘・アスベスト 作家はなぜ死んだのか
  • 加藤正文 著
  • 中央公論新社1700円
  アスベスト(石綿)は、建材・資材として利点が多く、世界中で長期間利用されてきた。極細の繊維が肺に入ると10~50年の潜伏期を経て、中皮腫や肺がんに罹り、致死率も非常に高い。日本では1970年代に規制が始まった。  本書は、中皮腫で死去した作家の藤本義一が、どこでアスベストを吸ったのか、ミステリー小説のように追う場面から始まる。  新聞記者の著者は、兵庫県のクボタ事件、大阪・泉南の被害だけでなく、ブレーキパッドや小道具に使われるなどを細かく追う。毒性が判明しても高度成長期を過ぎるまで規制が緩かったこと、予想外の場所で製造され、周辺にも被害が出ていること、国内で規制されると途上国へ輸出されることなどの問題を明らかにしていく。つまり、いつでも・どこでも・誰でもアスベストを吸った可能性があるのだ。藤本義一の原因も…。  国の不作為と共に、水俣病や原発災害との共通点が浮かび上がる。過去の被害ではない。(三)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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