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ふぇみんの書評

検証・法治国家崩壊 砂川裁判と日米密約交渉

吉田敏浩、新原昭治、末浪靖司 著

  • 検証・法治国家崩壊 砂川裁判と日米密約交渉
  • 吉田敏浩、新原昭治、末浪靖司 著
  • 創元社1500円
 誰もが感じる「法治国家でない」実態がこれほど根が深いとは。  60年安保改定交渉真っ只中に、米軍立川基地拡張をめぐる「砂川事件」裁判への米国の圧力と、迎合する田中耕太郎最高裁判所長官(当時)や外務官僚の実態を、新原、末浪が2008年以降に発掘した日米密約に関する米国解禁秘密文書とともに明らかにした。  1959年3月、砂川事件で東京地裁は米軍駐留を憲法9条違反とする判決を下した(伊達判決)。すぐに米国は藤山外務大臣に高裁判決を省く「跳躍上告」を提案。駐日大使は田中長官に接触し、長官は裁判の秘密を大使に暴露。最高裁はついに米軍駐留を合憲とし、「高度な政治性」のある事案は憲法判断しないとした理論(統治行為論)は米軍機の騒音や事故を司法が救済しない土台を作った。  米軍の要請に従い、外務官僚が米軍に都合がいい解釈操作を秘密裏に重ね、今の米軍の治外法権を作りだした。「独立国」でもないのに何が「普通の国」だ。(登)

書店不屈宣言 わたしたちはへこたれない

田口久美子 著

  • 書店不屈宣言 わたしたちはへこたれない
  • 田口久美子 著
  • 筑摩書房1500円
  本好きで“本屋になりたい”と思った人は多いだろう。でも現実は厳しい。長年ジュンク堂などで働いてきた著者が、書店の来し方行く末を思い、同僚に売り場運営や仕事の移り変わり、厳しい勤務などを聞き、まとめたのが本書。  本は社会を映す。書店によって新刊を平積みにする/しないという並べ方を考察し、また“本屋からその町の特徴が見える”という。フェミ本の棚から、この30年のフェミニズムへの関心の推移がよく分かる、というくだりには合点がいった。法律書の担当者から、新店舗開店の棚づくりでは、「日本国憲法をまず頭に持っていくんです」と聞き出す。  「不屈宣言」とは、ネット書店に席捲された現状の考察と、マンガや雑誌ばかりが売れる時代への抵抗だ。「効率的な本の買い方は、本を手に入れる際の物語を失わせている」と言う。書店・取り次ぎ・出版社の3者を巻き込んだ新しい書籍販売・流通システムの提案など、著者は未来を見つめている。(三)

被ばく者差別をこえて生きる 韓国原爆被害者2世金享律とともに

青柳純一 著

  • 被ばく者差別をこえて生きる 韓国原爆被害者2世金享律とともに
  • 青柳純一 著
  • 三一書房 2200円
 原爆被害者2世のための運動を続けた金享律(キム・ヒョンニュル)の遺稿を収めた追悼集。彼の母親は5歳のときに広島で被爆、25年後に韓国で生まれた彼は、幼少期から病弱で1学期ごとに1カ月間入院するほどだったという。成人した後、わかったのは「先天性免疫グロブリン欠乏症」という病だった。2002年、「韓国原爆2世患友会」を結成した彼は、韓国政府に向け原爆被害者とその2世らの名誉回復、核による遺伝究明のための法制定を求める運動を行った。そして05年に34歳で亡くなるまで、病を押し、度重なる喀血に苦しみながら闘い続けた。その意志はいかほどであっただろうか。 ちなみに「患友」とは日本語では少し耳慣れないが、「同じ患者仲間」という意味で、彼がこだわった言葉である。 被ばく者差別の問題を正面から取り上げ、「先支援、後究明」の原則を貫いた彼の遺稿は、福島を経験した私たちへの問いかけでもあると感じさせられる。(梅)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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