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ふぇみんの書評

沖縄戦と心の傷 トラウマ診療の現場から

蟻塚亮二 著

  • 沖縄戦と心の傷 トラウマ診療の現場から
  • 蟻塚亮二 著
  • 大月書店1900円
 精神科医の著者は、2004年から沖縄の病院に勤務した際、高齢者たちの「奇妙な不眠」症状に出合った。アウシュビッツの生還者の精神症状と似ていると感じた著者が調べてみると、皆子どもの頃に沖縄戦を経験していた。高齢になり近親者の死などを機に、ホットな記憶が浮上する。著者はこれを沖縄戦のトラウマ反応と診断。本書は精神医学の見地から沖縄戦の被害の深刻さと広がりを明らかにした。  沖縄戦のトラウマは、「晩発性PTSD」のほか、うつ、DV、アルコール依存、児童虐待を引き起こし、第2・第3世代へとその弊害が引き継がれたと著者は推測する。沖縄戦の被害とは第1世代の脳の中で生き続け、第2・第3世代の現在の生き方を左右する、現在進行中の被害だ。さらに今日も米軍機の轟音がかれらの症状を悪化させている。  「戦争記憶は風化しない。風化するとしたら政策や画策による」。早急に戦争被害・加害のトラウマ調査をしないと間に合わない。(登)

不登校・ひきこもりが終わるとき 体験者が当事者と家族に語る、理解と対応の道しるべ

丸山康彦 著

  • 不登校・ひきこもりが終わるとき 体験者が当事者と家族に語る、理解と対応の道しるべ
  • 丸山康彦 著
  • ライフサポート社1600円
高校時代に不登校、大学卒業後にひきこもりを体験した著者は、2001年から「ヒューマン・スタジオ」という相談室を開いている。翌年から始めたメールマガジン「ごかいの部屋 不登校・ひきこもりから社会へ」は、親を中心とした読者から大好評。その中から50本余りを収録したのが本書。  実体験から深い思索を重ねた内容は、「生きる」ことを問うていて、誰にとっても示唆深い。  人が生きる道はひとりに1本ずつ用意されていて、不登校・ひきこもりは、道の中のトンネル部分。トンネルに穴を開けて無理に引っ張り出すのではなく、出口まで歩き通すエネルギーを補給する“後方支援”が欲しいという。  本人は「学校/社会に復帰したい」という「願い」と同時に、その奥に「でも、まず自分を創り直したい」などの「思い」を抱えている。その思いにどう寄り添っていけばいいのか。(JO)

学習としての託児 くにたち公民館保育室活動

くにたち公民館保育室問題連絡会 編

  • 学習としての託児 くにたち公民館保育室活動
  • くにたち公民館保育室問題連絡会 編
  • 未来社3500円
 「就学前の幼い子どもを抱える若い主婦が子どもを預けて学ぶこと」を権利として保障しようと、東京都国立市で、くにたち公民館保育室が開室したのは1965年のこと。保育室があることで親も子どもも成長する、という確信のもとに保育室は運営され、公民館は女性問題の学習を基礎に、女の歴史や家族のあり方、女と仕事などをテーマに講座を開き、多くの女性グループを生み出してきた。  本書は、2005年から保育室が危機に瀕したのに際し、改めてその歩みと理念、成果を確認するために編まれた。母親だけに押し付けられた子育て責任による母子密着は両者の人権を蹂躙しているという視点に立ち、子どもは友達や保育者との関わりのなかで成長し、母親も能動的な受講から、「お母さん」としてではなく個として認め・認められ、仲間とともに市民として社会に働きかける力をもつ。  公民館職員・保育者・市民の協働が女の生き方を力強く変えてきた軌跡がまぶしい。(ま)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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