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ふぇみんの書評

戦後責任 アジアのまなざしに応えて

内海愛子、大沼保昭、田中宏、加藤陽子 著

  • 戦後責任 アジアのまなざしに応えて
  • 内海愛子、大沼保昭、田中宏、加藤陽子 著
  • 岩波書店2600円
「戦後責任」と聞いて、「戦後何年たつと思うのか」「まだ謝罪するのか」と反応する人は多い。が、日本人遺族への「特別弔慰金」は遺族年金受給資格者死亡後も次の遺族に払い続けられる一方で、“外国人”は「国籍条項」の差別で補償から除外され、さらに戦犯裁判では日本人として裁かれた。何という理不尽さ…。  本書は、戦後責任・補償問題に深く関わってきた学者3人の鼎談である。三者の個性がぶつかるおもしろさと的確な司会(加藤)が光る。4人の深く、広い視野は、戦後責任を語る意味、東京裁判を含めた戦争裁判の問 題性、サンフランシスコ平和条約が社会に与えた影響など、日本社会の不正義を浮かび上がらせてくれる。一般市民への戦争犯罪の多さと戦争法違反や戦争犯罪が十分裁かれていないという日本の侵略戦争の特質を自覚させられた。  市民運動に長く携わってきた3人の「結果を出してこそ」などの提言も説得力がある。(り)

子どもと話す マッチョってなに?

クレマンティーヌ・オータン 著 山本規雄 訳

  • 子どもと話す マッチョってなに?
  • クレマンティーヌ・オータン 著 山本規雄 訳
  • 現代企画室1200円
 フェミニズムの思想について、高校生だった著者の弟との会話をもとに丁寧に説明する書。  「マッチョってなに?」という疑問から始まり、話題はさまざまに広がる。学校や職場で誰もが経験する言動に見え隠れする男尊女卑から、フェミニズムの歴史、男女共学、妊娠中絶、宗教、フランス語文法に隠れる男性中心主義など、身近な事象がフェミニスト的視点で分析される。著者自身が性暴力被害に遭った経験からフェミニストになった経緯も語られる。  法律や制度が整備されても、男女平等が達成されたわけではない。むしろ巧妙に、見えづらくなっているが、著者は闘い続ける決意を示す。翻訳書のため日本の実情とは違う面もあるが、「フェミって何?」と思う人、特に若者にはぜひ、一読を勧めたい。  後書きにも触れられているが、日本ではマッチョ=筋肉。一方、高校生男子が姉とフェミについて議論するなんて、やっぱりおフランスだなぁと思う一冊。(梅)

「修羅」から「地人」へ 物理学者・藤田祐幸の選択

福岡賢正 著

  • 「修羅」から「地人」へ 物理学者・藤田祐幸の選択
  • 福岡賢正 著
  • 南方新社1500円
  福島原発事故直後に「すでにメルトダウンが始まっているのでは」とコメントした物理学者・藤田祐幸さん。彼を追った毎日新聞紙上の連載をまとめたもの。  藤田さんは、2007年に退職し、長崎県西海市に自然と共生する家を建てた。日本中の原発よりも西への転居だった。共感する宮沢賢治の言葉を使い、それまでの「修羅」の生活から、「地人」になろうとしたのだ。  市民物理学者として長年反原発を主張。原発労働者の遺族を支援し、原発と核兵器の強い関連を指摘してきた。放射能と劣化ウラン兵器の調査に、チェルノブイリ、コソボ、イラクへいち早く出かけた。被害を受けたイラクの子どもを見て、「これは何か我々の知らないことが起きているんだ」と言った言葉は、福島事故後、ますます重くなっている。  藤田さんは以前も地元で環境保護活動をしていて、「地人」感覚は旺盛だった。現在の生活をかいま見る挿入写真も魅力的だ。(三)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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