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ふぇみんの書評

チャイルド・プア 社会を蝕む子どもの貧困

新井直之 著

  • チャイルド・プア 社会を蝕む子どもの貧困
  • 新井直之 著
  • TOブックス1500円
NHK報道ディレクターの著者は、貧困と子どもに関する取材を2012年より続けている。  今年は子どもの貧困対策法が施行となったが、国や行政は明確な目標や有効な施策が打ち出せていない。子どもの貧困率がOECD先進国中ワースト4位でありながら、生活扶助費と連動し就学援助を減額した自治体もあるなど、逆行するような動きも心配だ。  親の破産後に高校を中退しホームレス生活をした男性、母子家庭の母親が他界してからひきこもりの生活を送る10代女性、両親と車上生活をしていた中学生…著者の会った子どもたちの貧困の背景には、さまざまな事情が絡む。  生活保護世帯向けの学習支援教室や居場所づくり事業など、支える大人の広がりも必要だ。  最終章では「教育」と「福祉」を結ぶスクールソーシャルワーカーの役割に期待がされている。なり手不足の要因として、人材教育や、賃金面での課題も多いようだが注視していきたい。(梅)

寂しい丘で狩りをする

辻原登 著

  • 寂しい丘で狩りをする
  • 辻原登 著
  • 講談社1600円
  1997年、ある女性が殺される事件が起きた。性暴力を受けた女性が加害者を告発し、男は懲役刑に。出所後、女性を逆恨みした男は彼女を捜し出して、殺した。本書はこの事件を小説のプロットの一つにして、書かれたと言われている。  映画関連会社で働く主人公・野添敦子は、強姦された上に、加害者から恐喝された。冒頭は加害者に刑事裁判の判決(懲役7年)が下される場面から始まる。捕らえられた加害者は刑務所内で、主人公に対して逆恨みを増幅させていく。加害者の出所を知った主人公は探偵を雇って、加害者の居所を追い、自分に近づかないよう警戒する。主人公と彼女を守る女性探偵(彼女も暴力被害者)の行動に、心臓の鼓動が高まる。  ミソジニー(女性蔑視)が大きなテーマだ。それを乗り越えようとする女性同士のつながりに深く共感した。  現実の事件と異なり、命が守られるストーリーに安堵した。(三)

君臨する原発 どこまで犠牲を払うのか

中日新聞社会部 編

  • 君臨する原発 どこまで犠牲を払うのか
  • 中日新聞社会部 編
  • 東京新聞1500円
 本書は「犠牲の灯り」と題する中日新聞・東京新聞の連載に加筆したものだ。事故収束作業が続く現地。この季節、作業員たちは被ばく線量を気にしつつ、汗対策に苦労する。地元福島の人が6割を占めるが、中には沖縄から来ている人もいる。米軍基地の重圧に苦しむ故郷に家族を残し、フクシマで働く彼らの苦悩が胸を突く。  汚染水問題は依然解決が不透明なまま。にもかかわらず、現政権は原発維持方針をかかげ、再稼働準備を進めている。なぜこの国は脱原発に歩みだせないのか。多くの国民が望んでいるのに。取材班は、この疑問を胸に列島を旅した。不条理の渦中にある福島から原発街道の福井県若狭地方へ、地上戦を経験した沖縄、被爆地広島・長崎へ、そして金曜行動の東京・霞が関へ。さまざまな立場の人に話を聞く、実名報道にこだわって。匿名を避けたのは、〈顔の見える一人の人間を対峙して描くことが絶対に必要〉との思いからだという。その迫力は読む者に伝わる。(加)
【 新聞代 】(送料込み)
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 6カ月4,500円、1年9,000円
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 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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