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ふぇみんの書評

母と娘はなぜこじれるのか

斎藤環 編著 田房永子、角田光代、萩尾望都ほか 著

  • 母と娘はなぜこじれるのか
  • 斎藤環 編著 田房永子、角田光代、萩尾望都ほか 著
  • NHK出版1300円
最近、「毒母」本が増え、「つらいのは母のせい」と言える空気が出てきたが、「母娘関係は特殊だ」と、精神科医であり、母娘関係の著作もある編著者は言う。母息子でも、父娘でもない、同じ女であるが故の「しつけ」を通した「身体的同一化を通じての支配」。しかもその支配は娘の血肉と化し、否定をすると罪悪感を伴う。その内実に「男」として迫るべく、編著者が、母娘関係の著作や研究を行う著者らと対談した。  漫画家の田房は、母による呪詛が母から離れても続き、自分の欲望か呪詛か混乱する状況を語る。作家の角田は母の話をする時に独特の「郷愁みたいなもの」があると言い、漫画家の萩尾は漫画を否定され続け、作品中で「母殺し」をしていたと言う。臨床心理士である信田さよ子は母の「生き直し」願望を語り、社会学者でもある水無田気流は、高度経済成長期以降の母の育児負担(負担・責任・愛情)の増大を指摘する。  著者らの実体験に共感したり、うなったり…各自の迷いながらの対処法は、力を与えてくれた。(登)

子どもの貧困Ⅱ 解決策を考える

阿部彩 著

  • 子どもの貧困Ⅱ 解決策を考える
  • 阿部彩 著
  • 岩波書店820円
  前著『子どもの貧困』(2008年)において、今の子どもたちが陥っている深刻な貧困の状況について伝えた著者。その続編は「解決策を考える」というサブタイトルにあるとおり、考えられる解決策を上げ、その効果を検証する。  著者はまず必要な世帯への「現金給付」の効果は立証されているとし、「親がパチンコに使う」的批判を退ける。特に児童手当とひとり親世帯対象の児童扶養手当を拡充すべきだとする。  現物給付も必要である。日本の保育サービスの利点―あらゆる所得階層の子どもたちが通っている普遍的なサービスである―を強調しつつ保育の現場にもソーシャルワーカーが必要だとする。ほかに医療、食のセーフティネット(中学や定時制高校の給食等)、放課後対策、妊婦検診をあげる。  折しも「子どもの貧困対策法」が成立し、法に基づき大綱策定のため検討会議が開催され、来年度予算に向けて審議が行われている。本書を無駄にしたくない。(衣)

無頼化した女たち

水無田気流 著

  • 無頼化した女たち
  • 水無田気流 著
  • 亜紀書房1800円
 現代女子における「無頼化」とは、規範から逸脱すると同時に、1人で生きることを前提に価値基準を設定している状態と、社会学者であり詩人でもある著者は定義する。バブル期ボディコン女装に始まり東電OL事件、00年代の「負け犬」ブーム、サバイバル女子、腐女子、そして専業主婦回帰と保守化…と、時代の変化を追うと、表向きの「女性の社会進出」の背景で女性が抱いてきた「コレジャナイ」感じが分かる。「女子はどんどんやさぐれている」、「働くことはクソゲーである」といった言い回しが少し尖り過ぎの印象もあるが、貧困や非正規化といった社会情勢を踏まえた考察を読めばなるほどとうなずく。さらに著者は、「負け犬」「おひとりさま」が都市部の高収入女性の文化であることを指摘し、郊外を含む地方に住み不安定就労で生きる女性たちに視点を置く。  多様なテーマが重なりまとまりに乏しい部分もあるが、さらなる論考の深化に期待したい。(梅)
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