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ふぇみんの書評

比較のなかの改憲論 日本国憲法の位置

辻村みよ子 著

  • 比較のなかの改憲論 日本国憲法の位置
  • 辻村みよ子 著
  • 岩波書店760円
本書は政治主導の改憲ムードの中で主張される議論(改憲手続き、憲法擁護義務、押し付け憲法論、国民の義務と自由、個人と家族、非武装平和主義、国民投票)に沿い、日本国憲法を世界の憲法と比較し、その意義を明らかにする。  改憲要件が厳しいと言われるが、世界的にみると厳しくないこと、制定当時の政権には「押しつけ」だったが、仏人権宣言や米独立宣言の流れを汲んだ自由民権運動を源泉としたこの憲法を人々は歓迎したこと、自民党改憲草案のように前文に伝統や文化を盛り込むのは発展途上国に多いなど、改憲議論がいかに世界の、時代の潮流に逆流しているかが分かる。際だつのは憲法前文の「平和的生存権」と9条。大多数の国の憲法に平和規定があるが、ここまで徹底した思想に貫かれた規定はない。そこに「21世紀的意義がある」と著者。  「護憲派」にとっても、日本国憲法の世界の中の立ち位置を改めて知ることで、憲法への思いを新たにできるはずだ。(登)

夜間保育と子どもたち 30年のあゆみ

全国夜間保育園連盟 監修 櫻井慶一ほか 編

  • 夜間保育と子どもたち 30年のあゆみ
  • 全国夜間保育園連盟 監修 櫻井慶一ほか 編
  • 北大路書房2000円
  副題に「30年のあゆみ」とあるように、夜間保育の実践やそこから見える課題や今後の展望などが盛り込まれている。なかでも特に多くの人に読んでほしいのは、第5章「預けてよかった夜間保育園保護者の気持ち」だ。  ただでさえ「子どもを預ける」ことに対する風当たりが強いなか、夕食時から深夜にかけて子どもを預ける親たちへのまなざしはさらに厳しい。しかし「子どもに負担をかけているのでは」という思いは誰よりも親がもっている。母親たちを不安と自責から解放してくれたのは、働くことと育てることを両立したいという思いを丸ごと受け止めてくれる夜間保育園であり、「安心してくださいね」という保育士の言葉だった。  子育て支援には、「正論」に親を添わせるのではなく、専門職が現実に寄り添う柔軟さと共感力が必要なのだと思う。  毎晩大きなベビーカーを抱えて階段を降りてくれたという駅員のエピソードが胸にしみた。(葉)

映画から見える世界 観なくても楽しめる、ちづこ流シネマガイド

上野千鶴子 著

  • 映画から見える世界 観なくても楽しめる、ちづこ流シネマガイド
  • 上野千鶴子 著
  • 第三書館1400円
 映画好きは多い。映画に一家言ある人も結構多い。しかし、こうずばずば書けるのは著者ゆえか。  女性誌の連載をまとめた本書に、さぞや辛口だろうと期待した。当然、家父長制や「結婚」にちゃんと食いつく。あの映画の結末がなぜ求愛?と書かれて、嬉しくなる。女性が自立していくと思いきや、求愛されてそれに乗る。「夫と違ってバイブなら合わなきゃすぐにとっかえられるのにね」とちくり。  老いや女の生が主題の映画はもちろん、ジェンダーチェックも怠りない。だが、戦争映画とナチスものは見ずにいられない著者の選定には、反イスラエル的なイスラエル映画、パレスチナの女テロリストを描く映画、難民キャンプの子どもたちが主人公の映画も。琴線に触れるひと言が、映画好きの読者のツボを押さえている。  最後に「一度やりたいプロデューサー」と著者。真実を、ウソを交えて描き出す映画の魅力満載な評。(三)
【 新聞代 】(送料込み)
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 加入者名:婦人民主クラブ
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