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ふぇみんの書評

ハルモニの唄 在日女性の戦中・戦後

川田文子 著

  • ハルモニの唄 在日女性の戦中・戦後
  • 川田文子 著
  • 岩波書店2400円
沖縄のぺ・ポンギさん、宮城の宋神道さんという、2人の在日女性の「慰安婦」被害体験を聞き書きした著者の新作。雑誌「世界」の連載をまとめたもの。  男性より識字率が低かった少女たちは、白いチョゴリにすべての乗り換え駅と行き先を墨で書かれて船に乗せられ、日本にいるはずの親族のもとに送られたという。学校へ行けば「チョーセン」といじめられ、工場では眠らぬよう頬をつねられながら夜中まで働かされた。被爆も空襲も、根底に排外主義があるために苦しみが濃縮される。さらに目を覆いたくなるのが夫からのDV。ここにはやはり、男性には語られなかった歴史がある。「苦労自慢の中にある女性たちの力強さ」と著者は言うが。  戦後の「解放」のときも、東日本大震災のときも、在日の人々の頭をよぎるのが関東大震災での朝鮮人虐殺の事実だ。その恐怖の感覚は共有できないだろうが、「日本人こそ知るべき歴史」の共有は可能なのではないだろうか。(矢)

歳月 鄭智我作品集

鄭智我 著 橋本智保 訳

  • 歳月 鄭智我作品集
  • 鄭智我 著 橋本智保 訳
  • 新幹社1800円
  1990年、韓国で、パルチザンだった両親の活動を記録した、小説『パルチザンの娘』を発表した著者は、国家保全法違反により、発禁処置を受け、逃避生活の経験を持つ。その後、母校で教鞭をとる一方、小説家として旺盛な執筆活動を続けているということだが、本書にもパルチザン闘争にまつわる短編が収録されている。  朝鮮半島は、1945年の日本による植民地支配からの解放後、南北分断、朝鮮戦争など、東西イデオロギー対立の中でも数多くの悲劇に見舞われた。本書ではそんな苦難の歴史に翻弄された人々の日常が描かれている。匂いまで立ち上ってくるような地方の風景や人間 の体の描写がすぐれ、場面がリアルに重く迫り、胸を打つ。  記憶を失くした老人が多く登場するが、辛酸をなめ、傷を抱え続けた人生と老いを鋭く見つめながらも、癒すような温かい共感が流れている。世の中でたった一つだけ平等なのは歳月…という言葉が心に沁みる。(Y)

生活保障のガバナンス ジェンダーとお金の流れで読み解く

大沢真理 著

  • 生活保障のガバナンス ジェンダーとお金の流れで読み解く
  • 大沢真理 著
  • 有斐閣3700円
 政府による税・社会保障制度や雇用維持政策・労働市場の規制などの制度政策と、民間の制度・慣行が相互作用して人々の暮らしのニーズが持続的に充足される(されない)しくみを著者は「生活保障システム」と呼び、その類型として「男性稼ぎ主」型、「両立支援」型、「市場志向」型を設定する(1980年代前後の各国)。   著者によると、日本は強固な「男性稼ぎ主」型であり80年代にすでに貧困率が高い社会であった。90年代に企業は正社員の数を絞り込むことで雇用不安や生活不安を増すリスクを生み出し、家族を形成することが先送りされ消費は抑制された。結果、経済成長は輸出依存となり少子高齢化が加速し消費が低迷、負のスパイラルへ。  その間、社会保障制度審議会や男女共同参画審議会は「男性稼ぎ主」型から脱却する必要性を提言したが政策には生かされず、民主党政権の試みも中途だった。「ガバナンス」の視点が本著の特長である。著者の仕事の集大成。(衣)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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