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ふぇみんの書評

ヘイト・スピーチとは何か

師岡康子 著

  • ヘイト・スピーチとは何か
  • 師岡康子 著
  • 岩波書店760円
 いま日本に蔓延するヘイト・スピーチ。著者は、日本の特異な現状や諸外国がどのように対処してきたかを紹介しながら、悪質なものは法規制するべきと論じている。  「何より考えるべきは、差別によりもたらされるマイノリティ被害者の自死を選ぶほどの苦しみをどう止めるかということではないだろうか」という著者の言葉は重く、説得力を持つ。「マイノリティに対する差別をむしろ率先して行ってきたのは権力である」という意見にも同感だ。  著者が指摘するように、排外主義デモの過激さについ目を奪われてしまうが、デモに参加している人たちは、政治家たちの発言を強烈に表現しているに過ぎない。糾弾すべきは公人の差別発言、ヘイト・スピーチを放置してきた政府のはずだ。  マイノリティ被害者への支援体制や、国の規制や対策を考える上で、規制反対論・慎重論も丁寧に検討している本書は、非常に参考になる。(り)

性と柔 女子柔道史から問う

溝口紀子 著

  • 性と柔 女子柔道史から問う
  • 溝口紀子 著
  • 河出書房新社1400円
 オリンピック銀メダリストでもある元柔道選手の著者が、柔道という「男のムラ社会」に社会学の見地から切り込んだ。  現在の「日本柔道」を創りあげたとされる講道館の創設者・嘉納治五郎は、女性に参政権がない時代から女子部を設ける一方で、試合を禁止した。練習は「礼節、健康、しつけ、護身」に重点が置かれていたという。  国際的な気運に押されるように、日本で女子柔道の試合が開始されたのが1978年。しかしその規定は、さまざまな禁止事項を盛り込んだ「女性らしい柔道」という男目線によるものだった。柔道の歴史と、そのなかに位置づけられた女性柔術・柔道の歴史をひもといていくうちに、女子柔道に対する蔑視の経緯が浮かび上がってくる。 2013年の女子柔道強化選手による暴力告発事件は、ずっと内包されてきた問題だったのだ。緻密な論理と行動力で女子選手たちを保護し、暴力文化を打破したいという強い思いが伝わってくる。(葉)

人間なき復興 原発避難と国民の「不理解」をめぐって

山下祐介、市村高志、佐藤彰彦 著

  • 人間なき復興 原発避難と国民の「不理解」をめぐって
  • 山下祐介、市村高志、佐藤彰彦 著
  • 明石書店2200円
 富岡町民であり、今は東京で暮らす「とみおか子ども未来ネットワーク」の市村、福島大学うつくしま未来センターの佐藤、首都大学東京の山下。とみおかタウンミーティングと被災者への聞き取りをもとに3人が議論して本書はまとめられた。原発被災者に対する「不理解」をキーワードに、避難、支援、賠償、コミュニティ、津波被災との違いなどの課題を取り上げる。  今、福島では、政府による画一的な帰還政策が進められている。「帰りたい」という避難者は多いが、それは直ちに帰還政策につながるものなのか。  震災から3年を迎え、巨大なストレスの前に被災者の心も身体も、居場所も千々に乱れている。被災者の声を拾い、専門家とも連携し、崩壊したコミュニティを再建すること。「『かわいそうな被災者』ではなく、自分たちの暮らしを取り戻す闘いの中にいる」と市村は言う。解決を求めることは「この国のあり方そのものに言及する必要がある」。私たちの関わりが問われる。(い)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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