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ふぇみんの書評

自衛隊協力映画 「今日もわれ大空にあり」から「名探偵コナン」まで

須藤遥子 著

  • 自衛隊協力映画 「今日もわれ大空にあり」から「名探偵コナン」まで
  • 須藤遥子 著
  • 大月書店2500円
 自衛隊が制作協力した劇映画35作品を、社会背景と関連づけ、丹念に分析した書。  協力は、訓練中の戦闘機の撮影、駐屯地の使用など規模もさまざま。自衛隊は制作側からの要請で協力するが、費用請求はない。1960年代末から20年間、自衛隊の存在自体が議論された時代には協力した作品はなかった。転機は2005年。官民双方の思惑で、戦争映画にも利潤追求が優先され、政治臭をなるべく出さないという「政治性」も持ち始める。そして登場した「守るべき人がいる」という「守るイデオロギー」と、「自己犠牲」。個人的な心情(家族への思い)が国家的行為(敵国へ立ち向かう)へ帰結する姿も描かれ、予想通りゆるいナショナリズムへ誘導される。それも「ジコチュー・ナショナリズム」と著者が言う内向きなものだが。  自衛隊協力映画を一部の戦争オタク向けとゲテモノ扱いしないで、関心を向けるべきか。(三)

避難弱者 あの日、福島原発間近の老人ホームで何が起きたのか?

相川祐里奈 著

  • 避難弱者 あの日、福島原発間近の老人ホームで何が起きたのか?
  • 相川祐里奈 著
  • 東洋経済新報社1800円
 原発の事故後、「総理大臣命令だ。避難してください!」と突然言われる。施設にいるのは、重度の要介護の高齢者を含め簡単に移動できる人たちではない。バスが突然来る。避難先は、設備もない集会所や学校。避難中に亡くなった高齢者の死亡届すら受理されない。あるいは避難区域に置き去りにされ、バスが来ないホーム。食料も紙おむつもなくなっていく。  沿岸部から何カ所も経由して避難した先も過酷だ。避難設備はなく、高齢者用の食べ物はなく、食事介助で起こしてあげるのも人力だ。職員は家族と共に避難するため去っていき、残った職員はさらに疲弊する。  頼み込み、会津の高齢者施設などに高齢者たちは引き取られていく。そんな中、「残る」ことを選択するホームも。  大半の自治体の防災計画では、今も避難は各老人施設任せだという。  国会事故調査委員会で調査員として働いたあと、取材して歩いた著者の使命感を感じる。(衣)

どっこい 大田の工匠たち 町工場の最前線

小関智弘 著

  • どっこい 大田の工匠たち 町工場の最前線
  • 小関智弘 著
  • 現代書館2000円
 エッセー『粋な旋盤工』以来、旋盤工として働きながら町工場の職人たちを描いてきた著者が、「大田の工匠」に選ばれた103人のうち16人に取材したもの。最年長は78歳、最年少は44歳だ。  硬いあるいは柔らかい、扱いの難しい初めて聞く名の金属の、長尺や微細な加工作業、ロケットや人工衛星、原発や新幹線の部品製作(原発には複雑な思い)。そういうものは、大企業の研究室や、ハイテク最先端の機械で作っているのかと思っていたら、こうした小さな町工場の職人たちが担ってきたのだ。そんな職人たちの人生と仕事がちりばめられている。  土地柄、機械金属加工にかかわる人の話が多いが、視覚障がい者の触図筆ペンの開発や、スティールパンの調律、江戸切子などの話もある。東京・大田区では1992年に8200余りあった工場が今ではその半分。だが、個々の優れた技術と異業種ネットワークで、工匠たちは生き抜いてきた。がんばれ、町の工匠たち。(い)
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 6カ月4,500円、1年9,000円
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